日本では少子化対策という位置づけで、生殖補助医療の保険適用が実施される予定である。だが、第三者の精子提供や卵子提供によって生まれた子どもの「出自を知る権利」、精子・卵子・胚バンクの運営や情報管理、代理出産の法的位置づけなどはいまだ定まっていない。 ますます進展する生殖技術と、技術を望む人の気持ち、その背景にある価値観、医療、法律、政治、そして社会とのかかわりとは。生殖補助医療と出生前検査をめぐるさまざまな葛藤を照らし出し、全体像を描く。
書籍紹介を読む(菊地 栄/立教大学大学院兼任講師)>>
生殖技術は社会をどう変えるのか。社会は技術に何を期待するのか。不妊治療の範囲をはるかに越えて発展する生殖技術の問題と解決を照らし出す、画期的論考。
日本で生殖補助医療により生まれる子どもは約2万人、1年間に生まれる子どものおよそ2パーセントをしめる。生殖技術がもたらした最大の変化は、卵子を女性の身体から切り離したことだ。技術の進展はパートナー以外の精子や卵子による受精や、代理出産を可能にした。さらに事態を大きく変えたのは、受精卵が研究材料として注目されたことだ。
21世紀の医療として期待される再生医療の研究には受精卵が必要なため、不妊治療の過程で生じた受精卵が研究に使われる道筋がつけられた。技術は今までできなかったことを可能にし、私たちに新たな選択肢を突きつける。
生殖技術は、社会に何をもたらしたのか。…..
「子どもを作るなんていう人生」(=安定!?)とは相反する「冒険的人生」を送ってきた鬼才・ヒキタクニオが、45歳を過ぎて思い立った子作り。しかしなかなか子はできず、やがてヒキタ自身の精子の運動率が20%だったと判明。
そこから長い長い「懐妊トレーニング」の日々が始まった…。初めて知った男の不妊治療への素朴な疑問や違和感。同じように苦労する仲間の多さに気づいた著者は、その思いを周囲に公言し巻き込んでいくことで、周囲の人間の思いや行動も変えていく。さらに、女性の受ける身心の痛みにも気づき、夫婦間により強い絆が生まれていく…。
5年弱の「懐トレ」の末、数々の困難を乗りこえて、ようやく我が子を腕に抱くまでを描きながら、男性不妊について学べる、ドキュメント。
洋医学の考え方で妊娠するカラダになれる!私の治療院に不妊症で来院する患者さんの中には、たった数回の鍼灸治療で妊娠する方もいれば、何年通ってもなかなか妊娠・出産にまで至らない方もいます。
あるとき、この違いがどこにあるのか、私ははたと気づきました。それは、不妊が続く方々のカラダには、共通して「冷え」があるということでした。
この本では、東洋医学独特の考え方でカラダを温め、自然治癒力能力を向上させ、免疫・自律神経など、さまざまな人間の隠れた能力を引き出す方法をわかりやすく解説しています。それと同時に、カラダのケアだけでなく、心のケアについても触れています。とくに不妊につきまとう、さまざまなストレスはさらに妊娠しにくいカラダにしてしまうものですから、心のケアをすることは妊娠への近道でもあるのです。
医学や生殖科学に携わる学生向けに書かれた本だが、日本の生殖医療の現状がよくわかる。
産婦人科医の著者は「生殖科学が生殖医療を包括し、科学の分野が一般の人のからだをつくるにまでなってきたところに、これまでと違うあり方がある」としている。不妊カップルを治療することを目的にはじめられた不妊医療は、すでに臨床医療の域を越え、細胞をつくる、生命をつくる、という段階に入っている。
不妊の問題は、そうした生殖科学に密接に結びついているということを踏まえ、考えていく必要がある。
ソーシャル・ワーカーの著者は、長年の不妊治療にもかかわらず、子どもに恵まれることはなかった。15年以上、子どもができないという自分の立場と気持ちに折り合いをつけることが難しかったという。そうした体験から、著者は全米の子どもをもたない女性たち(22才から78才まで)に数多くインタビューし、それをもとに子どもがいないという喪失感を克服し、癒すガイドラインをまとめた。
不妊に関して成功例はよく紹介されるが、こうした子どもを望みながら恵まれなかった女性の気持ちに焦点を当てた本は、ほとんどなかった。いろいろな年代の立場の違う女性たちの、それぞれの理由や思いが溢れている。
アメリカでも話題になっている本だ。
イギリスのガイアブックスシリーズの中の、プレマタニティ編。このシリーズは、さまざまな分野で自然な治癒力を高める代替え療法を中心に、そのノウハウや考え方を紹介している癒し系のムック。
これまで日本では、不妊関係の本は数々あったけれど、それらはすべて医療中心に考えられ、もうひとつ別の視点から不妊につい語られたものはなかった。そうした意味でもうれしい驚きの1册。
実際には、不妊というよりプレマタニティ向けの構成になってはいるけれど、受胎能力を高める自然な方法、マッサージ、エクササイズ、鍼灸などは不妊治療中の人にも参考になる。カップルでからだについて見つめ直し、妊娠を準備することをすすめている。
科学者で、成人になってから自ら障害をかかえながらいのちに関する執筆活動をしている著者。
この本では、誕生から死までについて触れ、新しい生殖科学が、人類にどんな影響を及ぼすのか、それをどう捕らえ、考えていくか、思俊を与えてくれる。
なかなか赤ちゃんができないカップルの中には、排卵日とのタイミングがあっていないケースも多いとか。
先端治療にすすむ前にまず、タイミングをつかむ方法を知っておいてもいいかも。排卵や受精やしくみなど、ベーシックな知識もお役だち。
不妊治療最前線にいる産婦人科医が、現在の不妊治療の実情とその問題点をわかりやすく解説。
授精卵や胚を操作できるようになった不妊治療はもはや、臨床医学を超えて科学の域に入っている。
生殖活動は家族や人間関係という個人レベルの問題と分離して、細胞レベルで考えられ、操作されるようになったことが「生殖革命」たるゆえんであるという。
フジテレビアナウンサーの著者が、テレビ番組の取材をしながら不妊の現場を探っていったルポ。
治療を受けている人たち、最先端医療に携わっている医師などの思いや、その治療法を紹介。何年も我慢強く治療に向かう人たち。その先に子どもという確約があるわけではない。
そんなあやうい状況の中で、治療を受ける人たちは今日という瞬間をどのように生きているのだろうと、自身の経験から著者が自問するところに共感できる。
自ら不妊治療を続けているライターふたりが、先輩の立場で、不妊治療に関するさまざまな質問や不安に答える。
「不妊はこころの病」とズバッと言ってしまえるのも、不妊体験者だからなのだろう。親戚やまわりの人たちから言われた一言、夫との本音のやりとりなど、身近なことに細かく答えてくれているのがうれしい。
「不妊もそんなに悪くない」「笑いとばしてしまおう」と、実にポジティブ。
不妊治療に関するビギナー向けガイドブック。不妊の原因、検査、治療のほか、病院の選び方などを解説。からだの内部や、治療に使われる器具などがイラストによって説明されていてわかりやすい。末卷には全国の不妊治療病院256件のリスト付き。
結婚カップルの10組に1組が不妊で悩んでいると言われている。
赤ちゃんがなかなかできないと思っていても、不妊の検査に踏み切るかどうか、治療内容はいったいどんなものなのか、不安に思っている人たちも多い。
この本では不妊の原因、病院の選び方、検査や治療をはじめるときの注意点などのほか、全国の不妊治療病院のリストも掲載されている。
検査をはじめる前に、情報を集めることももちろんだけれど、原因は女性だけにあるとは限らないから、まずカップルで「子どもをもつ」ということについてじっくり話しあってから、と著者の産婦人科医はアドバイスしている。