人気の高い産科婦人科専門病院
東大阪市にある小阪産病院は、年間分娩数2000例を超す人気の高い産科婦人科専門病院です。病院のコンセプトは、母親と生まれてくる赤ちゃん、そしてその家族に充分満足してもらえるような暖かいケアを提供すること。そこに、院長はじめスタッフの願いがこめられています。それは出産や診療、検査など医療面の充実はもちろんのこと、院内の環境やお祝いディナー、マタニティ・エクササイズや準備クラスなどのさまざまなサービスのほか、目に見えない人と人とのコミュニケーションやケアなどにもうかがうことができます。
まずはメインの出産部門。アットホームな自然なお産ができるようにと、分娩室はすべてLDR室。LDRというのは陣痛、分娩、産後の2時間までを過ごす部屋のことです。分娩中に部屋を移動することなくリラックスして過ごすことができますし、立ち会う家族にとってもプライベートな空間はありがたいもの。欧米ではLDR室は、ポピュラーな分娩室です。陣痛の時期に過ごすベッドは、いざ赤ちゃんが生まれるときには分娩台に早変わり、必要な医療機器が回りに配置されます。ゆったりサイズの分娩台なので、そこでよつんばいや横向きなどのフリースタイルでの出産も可能。分娩室にはトイレのほか、ユニットバスや足浴器なども用意され、自然な出産ができるような工夫されています。分娩室の並びには手術室があり、緊急の場合への対応や、産科婦人科の手術が行なわれます。
地階にある検査室も充実。「院内で行なわれる検査のほとんどを処理ができるようになっているので、検査結果をいち早く知ることができます」と検査技師さん。薬剤師さんは「外来や入院中に処方される薬について、くわしくご説明します」と話してくれました。入院棟の中には薬剤情報管理室もあります。また、妊娠中どんな検査が行なわれるのか、費用についてはパンフレットに表示。出産の詳しい内容については、出産準備クラスや助産婦外来などで説明されているとのこと。
とても印象的だったのが、病院の受付前にある相談コーナー。ここでは、病院にはじめて訪れる人や、病院に来る前に電話で問い合わせてくる人たちのために、病院のガイダンスが行なわれています。
もうひとつ、病院を陰で支えているのが院内の「コンピューター・LAN」です。社内をコンピューター・ネットワークでつなげるというのは、企業ではあたりまえのことになりつつありますが、病院の中で取り入れている施設はまだ少数。院内どこでもスタッフがコンピューターを検索できるようになっていて、患者の状態や入院状況など、さまざまな情報処理を行なっています。それを管理しているのが、情報処理室の栗本さん。
「情報を共有し整理することによって、スタッフの情報処理の手間が簡素化され、それが結果的に患者さんへ還元されていくと思います」と話してくれました。
こうしたきめ細やかなサービスへの姿勢は、院内で長年行なわれてきたアンケート調査によって培われてきたもの。外来に訪れる人や、入院している人たちが快適に過ごせるように、ニーズを丹念に聞き、意見に添えるように努力してきた結果なのだそうです。
院内には、アメニティ・コーディネーターと呼ばれるスタッフがいて、入院中の女性たちの医療面以外のお世話をしています。院内に花を飾ったり、ミネラル・ウォーターなどを配付したりするのも、彼女たちの仕事。ときには女性たちの話相手になることもあるとか。
こうした努力は「日本医療機能評価機構」によって高く評価されています。これは、全国の病院に与えられる評価ですが、産科婦人科の単科病院としては、小阪産病院は日本初の「認定病院」になりました。
「いかに患者さんのニーズに答えられるかということを、スタッフ一同考え、医療面はもとよりサービス面での充実を考えています」という竹村院長のお話どおり、目に見えるゴージャスさに加え、一歩進んだ目に見えない暖かいケアの充実を追求している姿勢がうかがえました。
取材/きくちさかえ 2001.9月掲載 2006.4月更新