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こんな産院あんな病院

林産婦人科

院長:林 弘平 産婦人科医師
兵庫県神戸市須磨区行幸町4-2-7 Tel 078- 731- 0730
診療内容/産科、婦人科
外来診察時間/平日 午前9:00〜午後12:00
       午後3:00〜午後5:00(木曜日、土曜日の午後は休診)
休診/日曜日、祝日 

アクセス/山陽電鉄 月見山駅下車 徒歩約3分 JR 須磨駅より 徒歩15分

ホームページ http://www.hayashi-clinic.or.jp/

取材/きくちさかえ 2002.1月掲載 2006.4月更新


神戸の須磨海岸のほど近くに、林産婦人科があります。開業は大正7年。現在の院長、林 弘平先生の先代のお父様が開業された、地域に根ざした歴史ある産婦人科です。現在は、三代目にあたる林 正人先生とともに、年間およそ800人の赤ちゃんの誕生を支えています。

林産婦人科は、ラマーズ法に古くから取り組んできたことでも知られている産院。林 弘平先生は医師や助産婦など医療者がラマーズ法を研究するための組織「ラマーズ法研究会」の主催者でもあり、日本でのラマーズ法研究の第一人者。毎年、全国各地で活発に研修会が開かれています。
一方、林産婦人科では不妊外来にも取り組んでいます。検査と治療を行なっているほか、不妊に悩む女性のためのホットラインを設け、相談にのっています。ホームページ上でも検査や治療の内容を見ることができます。


ラマーズ法による自然な出産

ラマーズ法というのは、リラックス法(弛緩法)と呼吸法をとり入れた自然出産の方法です。お産のとき、不安や痛みで緊張してしまうと、からだの筋肉も緊張して、産道が伸びにくくなったり、子宮の収縮がスムーズに進まなくなってしまうこともあります。ラマーズ法の出産は、まずその漠然とした不安をとり除いて、リラックス法でからだの緊張をほぐし、呼吸法で心をしずめてお産に臨むという方法です。
一般に、お産にはマイナスなイメージがつきまとうと思っている人は多いもの。林先生は「出産という一生のうちでもっともほめられるべき行為です。それを、出産と痛みは密接な関係があって、女性が耐え忍ぶものとして代々伝えられてきたことから、マイナスなイメージができ上がってしまった」と言います。人類が長いあいだかけて語り継がれてきたこうした言葉は、出産へかけられた呪いだとも言います。

こうした出産に対するイメージが、女性を不安にさせ、出産も緊張した難しいものとなってしまうのです。ラマーズ法ではまず、適切な情報を知ることによって「痛み、耐え忍ぶ出産」というマイナスのイメージを取り除いていきます。


妊娠中のクラスでラマーズ法を身につける

林産婦人科では、妊娠中にラマーズ法を準備するためのたくさんのクラスが設けられています。まず、前期・後期の両親教室、母親教室、産前教室。そして、ラマーズ教室。こうした様々なクラスで、出産のしくみや、夫のサポートの仕方などを学び、それからラマーズ教室で実際の出産のときに役立つ、リラックス法と呼吸法を練習して、安心して出産に臨めるからだと心を準備していくのです。

呼吸法は、ゆっくりと吐く自然な複式呼吸法。リラックス法は、肩や首などからストンと力を抜いていくやり方で、からだの緊張をほぐしていく方法です。
このほかにも、マタニティ・ヨガクラスもあります。出産はいくら知識で理解しても、からだで覚えないことには、本番のときに実践するのは難しいもの。からだを動かす体操はもちろんですが、リラックス法と呼吸法はヨガの基本。ヨガをやっていくうちに、自然にリラックス法と呼吸法を身につけることができ、さらにそれによって心のバランスが整い、漠然とした不安がなくなり、出産へ前向きにとり組む姿勢ができてくるのです。


充実した多彩なクラス

このほかにも、林産婦人科にはいろいろなクラスが用意され、毎日妊婦や産後の母子が訪れてきます。その数はなんと全部で15クラスという充実ぶり。受付の奥にあるコンピューターの画面で、クラスの予約を入れるのも新しい試み。胎教コンサート、産後のヨーガ、子どもといっしょのヨーガ、リトミック、栄養相談、育児サークルなど。こうしたクラスに参加することで、妊娠中から産後にかけてのからだづくりや、育児の方法などを身みつけてくことができるというわけです。
また、外来は医師による健診だけでなく、助産婦による相談コーナーも設けられています。妊娠中、だれもが2回は受けることができ、疑問や質問に丁寧に答えてもらえるほか、個人的な悩みを相談することもできるのだとか。こうした、医療者との密接なコミュニケーションによって、女性たちの不安はさらに軽くなっていくことでしょう。


阪神淡路大震災のあとで

実は林産婦人科は、95年の阪神淡路大震災のとき、大きな被害にあいました。地震が起きた日、入院していた親子や患者さんは15〜16名いました。建物は全壊すらまぬがれましたが、鉄筋の建物の壁面はひび割れ状態。医院正面にあった外壁は、すべて壊れてしまいました。水道、電気、ガスは不通となり、電気はガソリンの発電機を急遽つけてもらって応急対応。水はペットボトルを使い、電気ポットで湯を湧かしました。冬の時期だったので、生まれたばかりの赤ちゃんの保温にはとくに気を使ったといいます。使いすてカイロをたくさん買ってきて、湯たんぽ変わりに使うなど、苦労が忍ばれます。
震災後3ケ月間ほどは、多くの妊婦さんたちが県外へ避難して出産するようになり、お産は通常よりずっと少なかったものの、スタッフは一丸となって、その状態をなんとかのりきりました。
林産婦人科は震災の年の年末から再建がはじまり、部分的に建て直しをくり返しながら、3年半ほどかかってすべての修復を終えました。須磨周辺は被害がとくにひどかった地域で、数年間は町中が復興に追われていました。
震災のあと2ケ月たった頃、私は林産婦人科を訪ねたことがあるのですが、その当時はまだ、周辺には壊れた建物が残り、そこかしこに空き地が目立っていました。当時の月見山周辺は、昔の下町の風情が残る地域だったのですが、およそ7年ぶりに訪れた今回は多くの建物が新しくなり、町そのものが見違えるように変わっていました。


赤ちゃんぞくぞくと誕生

林産婦人科の建物もすっかり生まれ変わりました。1階は外来と相談室、そして奥にラマーズ教室などが行なわれるラマーズホールがあります。 2階には分娩室が2部屋、そのとなりには畳みのある陣痛室、そして手術室。個室と相部屋の入院室、ダイニングルーム、エステ・シャンプー室などがあります。個室にはシャワー、トイレがあり、入院中の母親と赤ちゃんがゆったりと過ごしていました。


その日、分娩室は2部屋ともふさがっていました。お産がはじまっている人が入っていたのです。ちょっと部屋の中を見せていただきたいと、許可をいただいてのぞいてみると、夫と上の子が分娩室に入って応援していました。
産婦さんは分娩台の上にいたのですが、実にゆったりとしたなごやかな様子。


林先生にお話をうかがいながら、院内を案内していただいているあいだに、先生は2度呼ばれました。「赤ちゃんが生まれる」というのです。なんとこの日、うかがった2時間ほどのあいだに、2人の赤ちゃんが生まれたのでした。つい20分ほど前にお話をうかがったお母さんです。とても落ち着いた雰囲気だったので、そんなにすぐに生まれるとは思いもよりませんでした。これもラマーズ法の効果なのでしょうか。

年間およそ800人近くの赤ちゃんが誕生するという、林産婦人科。林先生はそんな忙しい中でも、つねにニコニコとした優しい笑顔で、産婦さんや家族に接しています。これまで2万人近くの赤ちゃんたちの誕生を見守ってきた林先生の温和さが、林産婦人科のラマーズ法の、おおいなる秘けつなのかもしれません。

取材/きくちさかえ 2002.1月掲載 2006.4月更新


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監修/医学博士・産婦人科医師(故)進 純郎先生(監修当時)葛飾赤十字産院院長




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