助産婦外来を設けているクリニック
沖縄那覇空港から車で20分ほどのところに位置する糸満市。街道沿いに、かみや母と子のクリニックがあります。開院は1998年。産婦人科医の神谷 仁先生と、小児科医の神谷鏡子先生、ご夫妻による新しいクリニックです。
沖縄の青い空に似合う、白い3階建てのクリニックは、入り口が広く開放的な雰囲気。1階には、産婦人科の外来と小児科があります。その名の通りここでは妊娠、出産から出生直後のベビー、そして子どもが大きくなってからも一貫して、母親と子ども双方のからだを診てもらうことができます。
産院には、院長先生をはじめ、スタッフによるさまざまな新しい試みがうかがえます。
医師の外来では、最新式の3ディのエコーを導入。おなかの中の赤ちゃんの様子を、写真やビデオに撮ることもできます。カルテは電子カルテ方式をとり入れています。
このクリニックでは助産婦外来を設けている点も特徴的。助産婦外来の部屋では、妊娠中の相談のほか、バースプランや医院で行なわれているお産の方法などの詳しい説明を受け、話し合うことができます。また、産後の母乳外来や育児相談なども行なわれています。
助産婦は現在7人。受け持ち制をとり入れている点も、妊婦へのうれしい配慮です。受け持ち制というのは、助産婦の担当が決まっているということ。毎回健診の際に違う助産婦に当たるのではなく、決まった助産婦が妊娠中からお産、産後、授乳期間までを診てくれます。
助産婦長の平良さんは「受け持ち助産婦は、妊婦さんに選んでいただいています」と話してくれました。いわば「マイ助産婦さん」。お産のときには、オンコールでいつでも駆けつけてくれるとか。もちろん、院長先生がお産に立ち会いますが、自然なお産をすすめているこのクリニックでは、助産婦がお産の介助をしています。
2階には、大きな窓から気持ちよく空が見えるロビーが広がっています。そのとなりにはガラス張りの新生児室とナースセンター。その奥に分娩室と手術室があります。
分娩室は2部屋。ともにLDR室です。この分娩室も特徴的。木の香りがただよいそうなバリアフリーのフローリングの床に、ひとつはゆったりとした分娩台があり、もうひとつの部屋には低いベットが置かれていて、バスルームもついています。お産のときには希望によって、分娩台とベットの部屋を選べるようになっています。
お産はフリースタイルをとり入れ、家族同伴でゆったりとLDRでくつろいでもらえるように配慮されています。入院室は個室。希望によって、母子同室と別室を選ぶことができます。入院中には、お祝い膳が用意されていて、こちらはロブスターのディナーとくだもの。いかにも沖縄らしい贅沢なメニューです。
マタニティ・クラスも充実。3階にはアーチ型の広い多目的ホールがあり、そこで出産準備クラスのほか、エアロビクス教室が開かれています。妊娠中から健康を自己管理して、できるだけ自然にお産してほしいという院長はじめ、助産婦たちスタッフの意気込みが感じられます。そのため、体重管理は厳しく指導しているとのこと。
母乳にも積極的にとり組んでいます。母子同室の場合には、授乳時間を見計らって、助産婦や看護婦がひとりひとりの部屋を訪問。母乳ができるだけスムーズに運ぶようにと、お手伝いをしているのだとか。80〜90%の母親が母乳で退院しています。
沖縄は全国で有数の子だくさんの県です。開院からまだ4年ですが、リピーターも多いとか。「台風のときにはお産が多い」という、南の島ならではの話も聞かれました。
妊婦は自分が納得のいくようにバースプランをたて、分娩室や入院の方法を選ぶことができる。そして、細やかな母乳指導。自分から積極的に妊娠中からお産にかかわり、出産、産後のスタッフたちのゆき届いたケアがあるからこそ、満足のいくお産をつくることができるのでしょう。もちろんその後も引き続き、小児科という安心できる環境を提供してくれています。
取材/きくちさかえ 2001.11月掲載 2012.5月更新