母乳育児中の食事に悩むお母さんたち
「母乳は赤ちゃんのはじめての予防接種」といいます。ミルクでは得られない、免疫を高める物質を多く含む母乳は、赤ちゃんを病気から守る大切な役割を持ちます。そのほかにも深いスキンシップが得られる、ミルクよりも消化がよくアレルギーが発症しにくいなど、母乳にはいいことがいっぱい。しかしその分、お母さん達には体力的にも精神的にも負担があることでしょう。
特に、母乳育児をしているお母さん達にとって、毎日の食事は悩みの種になっていることと思います。とった食事がそのまま母乳に影響していると考えると「気楽に食事が楽しめない」「具体的にどんなものをどれくらい食べればいいのかわからない」というお母さんも多いようです。
そんなお母さんたちにおすすめしたいのは、やはりシーフードベジタリアンの考えが根付いた食事。質のよい母乳を赤ちゃんに飲ませてあげるために、ぜひ魚と野菜の組み合わせを毎日の食卓にのせて欲しいのです。
“頭のよくなる母乳”ができる!?
魚の利点の第一に挙げられるのが、赤ちゃんの脳の発達に役立つ栄養素の補給に最適であるという点。魚に豊富な不飽和脂肪酸の一種である
「DHA(ドコサヘキサエン酸)」が、赤ちゃんの脳の活性化に欠かせないというお話はシリーズ3回目にしました。このDHAが粉ミルクにも添加されるようになったことはすでにみなさんお気付きでしょう。脳の活性化だけでなく、精神の安定作用があることもわかっています。DHAはサバやイワシ、サンマなどの赤身魚に豊富ですが、母乳が生臭くなる心配があるならブリやサケがいいでしょう。
母乳の弱点「ビタミンK」は野菜からとろう
さて、これらの魚貝に野菜を組み合わせるのがシーフードベジタリアンの基本。どんな野菜でもバラエティ豊かに食べて頂ければいいのですが、特に母乳育児中のお母さん達にとってほしい野菜があります。それは、モロヘイヤ、ツルムラサキ、ホウレンソウ、納豆など。これらに共通して多いのが「ビタミンK」です。
あまり耳なれない栄養素ですが、新生児には必要不可欠なビタミン。これが不足すると下血や吐血を起こす「新生児メレナ」という病気を発症することがあります。母乳には含まれない栄養素なので、母乳を飲んでいる赤ちゃんに多く発症します。腸内細菌の発育が未熟な新生児が腸などの消化管から出血を起こす病気です。生後数日してから産院では「ビタミンKシロップ」を赤ちゃんに与えることがありますが、それは新生児メレナの予防のため。退院後は、お母さんはなるべく野菜からビタミンKを摂取して、赤ちゃんに母乳で補給してあげましょう。
母乳育児中のお母さんの一日に必要なカロリーは2500Kcalで、通常の成人女性よりも700Kcal多くなります。これは、一日に850ccの母乳を出すために必要なエネルギー。そして、たくさんの母乳を出すにはたくさんの水分が必要。お茶やお水を積極的にとる他、汁気の多い食事を取り入れるのも効率がよいでしょう。
そこで私がおすすめしたいのが、「魚貝たっぷりうどん」です。朝昼晩の食事に加えて、おやつや夜食に加えてみては。うどんは一玉で600Kcal弱。「ビタミンK」野菜のモロヘイヤやほうれん草、「DHA」豊富なブリやサケ、イワシのつみれやかまぼこをのせたうどんはお母さんにも赤ちゃんにも最適。身体も温まって、母乳の出もよくなることでしょう。ぜひお試しを。
(談/鈴木たね子 構成・文/babycom)