ワーキングマザー応援エッセイ
babycom ARCHIVE

WM特集 エッセイ 子育て・仕事・わたし1

昔の常識、今の非常識?
親世代の育児、今の育児

babycom「育児・子育て」で、生後一ヶ月からの『子どものからだと病気 - ひだまりクリニック』を担当していただいているDr.ひだまりさんの連載エッセイ。「子育ても仕事もどちらも大事」と言うひだまりさん。ふたりのお子さんを育てているご自身の体験からの、ほんのりあたたかいワーキングマザーへの応援エッセイです。

.........親のアドバイスで育児不安に
.........親世代の育児
.........赤ちゃんの要求を満たす
.........育児法は親と子の数だけある


育児健診をしていると、時々親世代の人のアドバイスに逆に不安になってしまって・・・というお母さんがかなりいらっしゃいます。
親世代ともなれば20年から40年も昔の育児なのですが、本来は育児なんて普遍のものであるはずなのに、その頃と今では本当に主流の育児の考え方が違うようなので、自信たっぷりのお母さんやお姑さんのアドバイスに新米お母さんはとても不安になってくるという構図です。

そんなアドバイスは、たとえばこんな感じ。
「おっぱいをそんなに何回も欲しがるなんて、足りてないのよ。ミルクにしなさい。ほら、私がやってあげるから」。
「おっぱいばっかりでいいの?お茶をあげないと喉がかわくっていうわよ」。
「そんなに抱っこばっかりで、赤ちゃんに本当に振り回されているんだから。だめだめ。こっちが主導権を握って、リズムを作ってあげなくっちゃ」。
「抱き癖がつくから、泣いたからといってすぐ抱くことはないのよ。しばらく泣かせておきなさい。泣くのも運動ともいうわよ。それにあきらめることもあるし、自立も早いんだから。将来しつけやすいわよ」。
「いつまでおっぱい飲んでいるの。恥ずかしいわね、もういいかげんやめないと」。
「保育園に預ける?そんなの可愛そう。親の愛情を受けられないといい子に育たないわよ。(わたしが見るわ、が入る時も)」


親世代の育児
親が自分を育ててくれたわけで、親の自信を見ているとそうかなぁと思いつつも、それでは不安になるのもあたりまえと思います。相手も、もちろん育児不安に我が子をしようなんて気はなくって、真剣に導こうと思っているわけですから。
でも、育児の感覚というのは、不思議で親がこうでなかったから(こういう子育てを受けなかったから)こうしてあげたい、ということもあります。そして、もちろん昔よくいわれていたことが今は違うとされることもあります。 時代の雰囲気や育児の流行もあります。

こういう話の時、よく例に出すのは、うつぶせ寝のことです。10年ともう少し前でしょうか。頭の形が非常によくなる、ということで一時とても流行り、産院でもマスコミでも取り上げられたし、ベビー布団の新調は「うつぶせ寝用」があたりまえになった時期がありました(これでかなり稼いだ寝具会社もあったとか)。ですがこの流れは10年も持たず、SIDS(乳児突然死症候群)の一つの因子としてうつぶせ寝があると発表されてからは、寝返りできない子にうつぶせ寝は、普通は当然誰もさせないです。(余談ですが、人工乳と家族の喫煙も因子です。私は、この母乳育ちと仰向け寝は関係あるのではという気がします。母乳の子は添い寝・添い乳が多く仰向けで寝る子が多い、さらに睡眠が浅い・・深く寝すぎることとSIDSの関係もいわれている・・のではないか、またはお母さんと睡眠のパターンが似てくるというか同調してくるというのがSIDSが少ないことにつながるのでは・・・という風に思えます)。
話がそれましたが、こんな風に、10年もたたないで、よいとされる育児法はやめるべき方法に変わることだってあるのです。

現代の親世代が育児された時代は、欧米に追いつき追い越せのムードで、新しい物は良いとされる時代の雰囲気があったような、それで育児もそれ以前の古き良き時代の日本らしさが古臭いもののようにみられた時代のように思えます。
その昔、おんぶというあたりまえのスキンシップやおおらかなおっぱいのあげ方やご近所で育てあう日本の子育てを見た欧米人は「なんと日本人は子育ての上手な民族だろう」という感想を持ったといいます。
ところが、その日本人に合った子育て方・良いものは急速に消えて、「おっぱいよりもミルク」「太っている子ほど健康」「病院出産が安全で最新」とされました。この頃、各地でまるまる太った健康優良児がコンクールで表彰されました。
「抱き癖はよくない」の考え方もこの頃主流でした。核家族が急激に増え、手もなくなる親にとっては逆に救いにもなる考え方なのかもしれません。現在はこの考え方はもはや主流とはいえないでしょう。もちろん、同じように核家族やさらに共働きまで多くなっている今はどう考えるのでしょう。


私は、育児健診で次のようにお話しています。 おっぱいや抱っこの考え方は単純なんです。「赤ちゃんの要求を満たす。赤ちゃんの不快を快に変えてあげる。それにつきると思う」と。
赤ちゃんの要求を満たしてあげる、いっぱい愛されて大事にされているという実感・自信を持たせてあげる、そういう生活こそが赤ちゃんの他人への信頼感を育て、後の自尊感情(自己信頼・・・自分を大切にできる、好きであることにつながる気持ち)のもとだと思います。他人への足がかりが母親だと思います。そして、それが父親へ、家族へ、さらに周囲の人間へ、と繋がっていくのです。将来への人間関係の基礎を作る大事な時期ともいえると思います。
だから、「泣いたら抱っこしてあげる、おっぱいをふくませる」で基本的にいいと思いますし、それで泣き止むなら赤ちゃんの不快をとりのぞいてあげられたということです。こういう風に時間や回数を気にしない生活をしばらくしていたら、おっぱいはかなりの人でよくでてきます。その前に、周囲の雑音でめげてしまってる人、お母さんに余分なミルクを足されている人(それで、せっかく出ているのに分泌が悪くなってしまう)が健診でもいらっしゃいます。
もちろん、おっぱい、抱っこで泣き止まないこともありますね。そして、お母さんは、どうしたらよいのかわからないことも多いと思います。わからなくっても、わかってあげたいと思いいろいろ探る、そういうことが赤ちゃんに通じるし、その気持ちこそが大事なんだと思います。そういうことだったのね、とそのうちわかることもあり、そのときが早い場合も遅い場合も、結局わからないまま泣かなくなることだってあると思います。

赤ちゃんの要求を満たす
もちろん、赤ちゃんのいる現実生活は容赦ない雑用が山のようにありますから、いつだって抱っこできる状態でないのも普通です。そんな時も、「抱き癖がつくから抱かない」というのと「今は抱けないの、ごめんね」という気持ちでいるのとでは、赤ちゃんの受ける気持ちも違うと思います。こういう気持ちには赤ちゃんは敏感なのです。

こういう風に赤ちゃんの要求に添ってあげていると、しつけができなくなるかというと、私はその逆だと思います。しつけはお母さんと子どもとの絆がきちんとできているからこそできるのだろう、と考えています。 厳しく一人できちんとさせようと抱かない、一人で寝かせる、という方針の場合、一見泣かなくてしつけられたように見える子は実は諦めて泣かない、信頼できるはずの親に訴えなくなっているという警告が書かれた本(『サイレントベビーからの警告』)もあります。泣かない赤ちゃんは、しつけられて順調に見える場合もありますが、こんな早い時期から親を信頼すること、要求していくこと、人間関係を作っていくことを諦めているのだ、というのです。上手に適応(心理学的には過剰適応ともいう)しているともいえるのかもしれませんが、後になって、この中には問題を起こしてくる子もいるのだろうと思います。もちろん乳児期の育児は全てではなく、いろんな修正もあり、同じような育児でも、子どもによって受け方もさまざまです。
でも、始終機嫌のいいという赤ちゃんは、本当に満たされて機嫌がいい場合もあれば、もしかすると諦めて泣かないようになった赤ちゃんもいるのかも、と思います。そう考えると、親に要求しぐずる子どもはある意味安心なのかもしれません。
親との関係を子どもが諦めていない、親と関係を作りたい、わかって欲しいと子どもが訴えていると考えられるからです。
親と子がぶつかるのは当たり前、関係を作りあいたいと思うから、こう考えると、泣いてる子どもを抱けるのは嬉しいことではないですか?今はわからなくってもいい、あせらなくってもいい、ゆっくりゆっくり関係を作っていけばいい、それぞれのペースでいいんです。


育児の方法はいろいろあるのがあたりまえです。
親もいろいろ、子どももいろいろ、生活や価値観もいろいろなんですから。親と子の数だけ育児の考え方が あるのかもしれませんし、我が家はこうと、それを決めていくのは子どもをみている親しかいないのです。
他人にあてはまる方法がいいという保証はどこにもなく、参考にはできても、最終決定はやはり親が自分の感覚で決めていくしかありません。いろんなやり方の中から自分と子どもに一番合う方法を選択する連続なのではないでしょうか。育児というのは、自分の方法はこうだ、と自信をつけていく過程なのではないか、と思います。

その過程こそ大事だし、後になって失敗だったと気付くことがあってもいいと思います。そのときそのとき真剣なら、許される、いつからだって取り戻せる、と思います。日々一生懸命やっていることに自信があれば自分も納得できると思います。子どもには愛情が通じるのだと思います。親の一生懸命な姿は子どもにきちんと伝わっているのだと思います。



ワーキングマザー応援エッセイ

子育て・仕事・わたし CONTENTS

昔の常識、今の非常識?

子どもの要求とお母さんの生活

お母さんの秘けつ

力を持っているからこそ.......

「母性のかたち」

子育てはキャリア(1)

子育てはキャリア(2)

ワーキングマザーの5月病


babycom おすすめ記事
babycom Site

ベビーマッサージ-babycombabycom ベビーマッサージ

ベビーマッサージの基本は、親と子の肌のふれあい。大好きなママパパにマッサージされることで、赤ちゃんは安らぎを得ることができます。




TOP▲