ワーキングマザーへの応援エッセイ

WM特集 エッセイ 子育て・仕事・わたし5

みんな違って、みんないい「母性のかたち」

babycom「育児・子育て」で、生後一ヶ月からの『子どものからだと病気 - ひだまりクリニック』を担当していただいているDr.ひだまりさんの連載エッセイ。「子育ても仕事もどちらも大事」と言うひだまりさん。ふたりのお子さんを育てているご自身の体験からの、ほんのりあたたかいワーキングマザーへの応援エッセイです。

 ........母性は育てるもの
 ........母親を支える
 ........いろいろあっていい母性のかたち


母性は育てるもの"
母性って種みたいだと思います。人がいろいろあるように、種にもいろいろあります。堅くてなかなか芽がでないものや、とても芽がでやすいもの、育つのに時間のかかるものやら、一旦芽がでるとすくすく育つもの。夫の愛情という肥料がとても役立つことがあったり、自分で大切に育てることもできたり。この場合、蒔かれた大地というのは産む場所ということでしょうか。最初に水をあげて手入れするのは、お産に臨む自分と介助者でしょう。そして、赤ちゃんと出会ってからは、赤ちゃんに鍛えてもらうこともあり、夫や家族、友人や先輩、すばらしい本との出会いが水や肥料になることもあります。
前回に書いたように、私は自分らしい子育ての形をみつけるまで遠い回り道をしてきました。多分、それは私には必要な道のりだったのだと、今では思っています。
一人目の子育てで一番目を背けたかったのは、自分に母親らしい感情が湧いてこない、ということでした。それは、納得できない妊娠中の治療と辛いお産、自分の性格、周りのサポート、全てが重なって起きたことだと思います。無理をしてでも一人で抱え込み、素直に人に頼るということが苦手だったということがよくなかったのだと、今はよく理解できます。
その頃、私は「母子相互作用というものは疑問視されている」という言葉に救われる思いでした。そうよね、産んだらかわいい、母性たっぷりの母になるなんて幻想よね、と。こんなに大変で、振り回されてばかりで、と。

私は、そんな自分にも母性はあったのだと信じたいです。形は世の中で広くイメージされているような慈愛に満ちたものでも献身的なものでもないけれど。「大変だけれど可愛い」ではなく、「可愛いけれど大変」だったけれど。


お母さんを支える、これは、今の社会のキーポイントだと思います。子どもが家族のものだけではないということを考えてみてください。家族は地域に属し、地域は社会に、日本という社会は世界に属しています。子どもは将来、社会を動かす力を持ちうるものです。力の大小や善悪を問わず、社会的な存在です。そう考えると、子どもは未来そのものといえます。子どもを育てることは、社会の将来を育てるようなもの。社会の将来を育てるお母さんは、当然、社会から支えられて当然の存在だと思います。これは、職業のあるなしに関係ないことです。

社会からの支え、というと漠然としていますが、行政というのはお母さんの本当のニーズをもっと真摯に考えて欲しいと思います (医療もまた同じであり、もっとも っと反省すべき点はあると思いますが)。
身近な例では、児童館。残念ながら、低年齢の子どもがいつでも安心して遊べる場所のようには思えません。図書館にいっても、子どもは迷惑がられ、肩身の狭い思いをすることもあります。もっと子連れに暖かい場所があればいいのにと思います。と同時に、市民の意識がもっと柔軟なものになればいいのに、とも思います。
ささやかなことなのです。母親がほっとできる一言というのは、本当に何気ない優しい一言なのです。私自身も経験してきました。スーパーや電車内でぐずる子をあやしてくださる方、「かわいいねえ、大変でしょう」とニコニコしてくださる方、周囲の人たちに受け入れられているということは、母親にとってはホッとするなにより嬉し いことです。
その逆に、辛い思いもしました。同じぐずる状況で、あからさまに迷惑だと睨む人、下りろという人、子どもがさも汚いものであるかのように舌打ちする人、子どものたわいないいたずらにいきなり子どもの手を叩く人(親に注意してくださーい)、階段をベビーカーと重い荷物抱えてヨタヨタと登っていても何十人もの人が目に止めず次々と追い越していきます。人々の余裕のなさ故でしょうか、それとも少しはと期待する親が愚かなのでしょうか。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということのないように、経験した母親こそ、助けられる状況になった時には助けたい、そういう小さなことが世の中を変えていけるのだと思います。

「母親を支える」ということは、母性を育てるために、どうしても必要なことです。ワーキングマザーは、さらに職場での支えが必要です。社会を人それぞれを認め合うより柔軟な暖かいものにするために、あらゆる政治家、経営者に考えてもらいたいことです。
このままでは、少子化はむしろあたりまえ、と思います。男女雇用機会均等も確かに大切です。でも、それは産むことを決意する以前のものです。そう決意するのも一つ、またそうしないと決意するのも一つ、多様性を認め合う社会では、産む決意をした人をも支えることが必要でしょう。


母性も、いろんな形があると思います。私の中では母性=子どもを育てている、です。「可愛いけど大変」な子育てをしている人だって、それだって頑張ってる、もうそれで充分じゃないですか。その思い全てを子どもは解ってくれている、ときには爆発してしまうお母さんを何回でも許してくれる、お母さんが一番と愛してくれる、子どもはそんな健気な存在です。
お母さんも、もっと自分の母性を信じましょう。母性にもいろいろあっていい、だからこそ社会なんだと思います。できれば、家族が、地域が、社会が、お母さんを支えて欲しい、そうすれば、もっと幸せに子育てできます。幸せなお母さんに育てられた子どもは幸せです。そんな子どもは周りを幸せにする力を持つようになると思います(まあ、絵に描いたような幸せなんて、本当は何処にもないのかもしれませんが)。

赤ちゃん(こども)が母親に託されているということは、種の蒔かれた大地に日が当たっているということのように思えます。試されているというか、頑張りなさいという天からのメッセージのような気がします。幸せは簡単には手に入らない、でもあなたのいるその場所で毎日、一日一日一生懸命生きてごらんなさい、あせらなくても今できなくてもきっと大丈夫、やっとそんな声が聞こえてきました。



ワーキングマザー応援エッセイ

子育て・仕事・わたし CONTENTS

昔の常識、今の非常識?

子どもの要求とお母さんの生活

お母さんの秘けつ

力を持っているからこそ.......

「母性のかたち」

子育てはキャリア(1)

子育てはキャリア(2)

ワーキングマザーの5月病


babycom おすすめ記事
babycom Site

ベビーマッサージ-babycombabycom ベビーマッサージ

ベビーマッサージの基本は、親と子の肌のふれあい。大好きなママパパにマッサージされることで、赤ちゃんは安らぎを得ることができます。




TOP▲