電磁波コラム4
ほんとうに役立つ機関にするために
私たちは「電磁界情報センター」をどう利用すべき?
市民に対する配慮は感じられるものの…
電磁界に関するリスク・コミュニケーションを促進する目的で
「電磁界情報センター」が2008年11月に創設されたことは
先のコラムでお知らせしました。そのセンターの開設記念シンポジウムが2008年12月12日に開催されました。
シンポジウムのでの発表者・発言者の資料は、情報センターのサイトに掲載されていますが、電磁波問題で長年活動してきた大久保貞利氏(市民団体「電磁波問題市民研究会」の事務局長)が発表者の一人であった点、原則論ではあったもののリスク・コミュニケーションの専門家(京都大学名誉教授の木下富雄氏)から「専門性と公平性の確保が肝要」との指摘がしっかりなされていた点、そして限られた時間のなかで会場からの発言を積極的に受け付けようとしていた点(上記サイトの資料の中の
「資料a」の「総合討論」がその様子を伝えています)など、コミュニケーションのあり方への配慮が確かに感じ取れる中身になっていました。
しかし、この情報センターは設立の経緯、組織の体制、資金面などを含む運営の方法などを見ると、電気事業・電波事業を推進していく組織とのつながりが大きいとみなさざるをえず、そもそも「中立性」や「透明性」の確保が難しいところから出発しています。言ってみれば、「特定の医薬品企業から研究のサポートをもらいながら、その企業を何らかの形で利することなく研究を進めることができるか」と似た問題を最初から抱え込んでいます。
これまでほとんどなされてこなかった、多様な関係者の声を聞きつつ、中立で公正な情報を提供し、問題の解決に向けたコミュニケーションを促進する、という重要な仕事を担おうという心意気で設立されたわけですから、リスク・コミュニケーションの具体的な進め方を模索している今の段階でこの組織を見限ってしまうのも賢いやり方とは言えないでしょう(先のシンポジウムでは、情報センターの「国民に開かれた、信頼される組織にならねばなりません」との決意は伝わりましたが、それをどう実現するかはほとんど示されていません)。
ほんとうに役立つ機関にするために、今だからこそ、声を届けたい
私もメンバーである、「電磁波から健康を守る百万人署名連絡会議」として情報センターに提出した「
公開質問状」で問題点をいくつか指摘していますが、このような質問にどう答えるかで、今後の取り組みの姿勢が見えてきます。
また、
先のコラムでお伝えしましたように、電磁波の影響を懸念して、子どもの携帯電話の使用に対して警告もしくは使用を制限する動きが海外で広まっています。情報センターがこれらを受けとめて、研究者、行政、携帯電話事業者、教育関係者などを入れてのコミュニケーションのために、問題提起をなすべきです。また、レストランや給食センターなどの厨房施設で普及してきている業務用IHクッキングヒーターに関しても同様でしょう。職業的にかなり多くの人たちが受けているだろう曝露に関する詳細な調査が必要であり、その調査を安全・安心の確保につなげるには、関係者間のコミュニケーションが不可欠なのです。
情報センターが、電気・電波事業者にとっての都合のよい、みせかけだけのリスク・コミュニケーションを進めて、それにお墨付きを与えるような機関となってしまうようでは困ります。私たち市民にとって本当に役に立つ機関とするために、まさに今、私たち自身が様々な要望や質問を突きつけていくことが必要です(質問や要望は
サイトで受け付けています)。
上田昌文(NPO法人市民科学研究室 代表)2009年2月
「電磁界情報センター」を形式だけのリスク・コミュニケーション機関にさせないために、今、私たちの声を届けることがとても大切であることが分かりした。
電磁波への感受性がもっとも高いといわれるのが胎児や小さな子ども達です。「電磁界情報センター」にとって子どもを産み育てるbabycom世代からの意見は、未来の子ども達の健康を守るためにきっと役に立つはずです。
電磁界情報センターへの質問・要望は(
http://www.jeic-emf.jp/inquiry.html)
電磁界情報センターTOP(
http://www.jeic-emf.jp/)