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ちきゅうの食卓4

「もったいない」のセンスで考える


1.つながっている世界の問題と私たちの暮らし

 もんぺ姿でどこからともなく現われて眼鏡の奥からぎょろりと世界を見渡し、「もったいない」の大切さを子どもたちに教えてくれる……。『もったいないばあさん』は、豊かに生きるための知恵の宝庫のような存在です。
「ちきゅうの食卓」シリーズ第4回は、50万部を超えるベストセラー絵本『もったいないばあさん』シリーズの作者・真珠まりこさんに、「もったいない」から世界の食と環境を考えるヒントをうかがい、日本に暮らす私たちの食卓と地球で起きていることのつながりを探ります。

協力/NPO法人市民科学研究室 2010年1月掲載

2.贅沢な食生活、ホントにこれでいいの?


『もったいないばあさん』の作者である真珠まりこさんは、今、地球規模で起きている食料不足や水不足、気候変動、戦争や貧困などの問題を伝える巡回展「もったいないばあさんのワールドレポート展—地球の問題と世界の子どもたち—」を行っています。『もったいないばあさん』の視点で世界を見つめてみると……。

真珠まりこさん

真珠まりこさん

 ある日、真珠さんが当時9歳だったお子さんと一緒に世界の厳しい現実を伝えるテレビを観ていた時のこと。お子さんが「ああ、ボクは日本に生まれてよかった……」ともらしたことが、気になってなりませんでした。

 「世界で起こっていることと、私たちの生活は、決して関係ないわけじゃない。しかし、何が、どのようにつながっているのかがわからない」。そこで、真珠さんが世界で起きている問題を専門家に取材し、子どもたちにもわかりやすい絵と文章でまとめ、もったいないばあさんをガイド役に、2008年1月より「もったいないばあさんのワールドレポート展」を開催。全国を巡回しています。
地球で今、何が起きているのか、そして、それらの問題が私たちの暮らしとどうつながっているのかを伝えています。

 ワールドレポート展では、インド、カンボジア、ネパール、スーダン、インドネシア、メキシコ、シエラレオネ、ロシア、レソト、日本で暮らす9歳の子どもたちが10人登場します。ネパール人のサビトリちゃんは毎日4時間かけて家族のために水汲みをし、学校に行くことができません。シエラレオネのソロリス君はさらわれて子どもの兵士となり、銃を手に戦っています。そして、日本人のはなこちゃんは好き嫌いが多く、食べ残しをしています…。
 真珠さんがワールドレポート展で伝えている話から、今、世界で起きている食の問題についてご紹介します。


 地球温暖化を始めとする気候変動は、今、世界中でもっとも関心が高い問題ではないでしょうか。ミャンマーでは、昨年起こったサイクロンで、たくさんの人々が住む家をなくしただけではなく、作物を収穫することができない被害がありました。オーストラリアでは干ばつによって小麦が不作に陥り、世界中で小麦粉の値段が高騰しました。ヒマラヤでは氷河が今までにないスピードでとけることによって、湖が決壊し洪水がおきています。そして、全ての氷河が溶けてなくなってしまった後にくる干ばつと水不足、食料の不足が心配されています。このように、気候変動によって一番心配されているのは、食料が足りなくなるかもしれないということです。

 世界では毎年、日本の国土の半分程度の面積の森が消えています。木を伐ってしまうと、大雨が降った時に土が流されやすくなり、そこは栄養分のない荒れた土地になって作物が育たなくなってしまいます。森がなくなると、土の栄養分によって育つ川や海の生物にも悪影響を及ぼします。
 「自分さえよければ、という考えを持たず、分け合う気持ちがあれば平和な世界ができます。どうしたらみんなで幸せに暮らしていけるかを考えていきたいですね」と真珠さんは言い、生きもの同士のつながりについて次のような例を挙げました。
 アメリカではかつて、毛皮を獲るためにラッコを乱獲していた時期があります。ラッコはウニをエサにしていましたが、ラッコがいなくなったためにウニが増え、今度はウニのエサであるケルプという海藻がウニに食べ尽くされてしまいました。小さな魚や貝の住み処だったケルプがなくなることで、小さな生物が暮らす場所がなくなる……。つまり、ラッコが人間に乱獲されたことで、海にいる全ての生物がいなくなったのです。
 「全ての生き物は、食べたり、食べられることでつながっています」と、真珠さん。『もったいないばあさん』の言葉を借りると、「地球はまるくつながっているからね」……。


ギャラリートーク

ワールドレポート展ギャラリートーク

 真珠さんはまた、次のようなショッキングな話を教えてくれました。
 世界では「食べものがない」という理由で、5秒に1人の割合で子どもたちが命を落としています。その一方で、日本では食べものの6割を海外から輸入し、その半分にあたる3割を食べ残ししていると言われています。
 「気候変動による災害で食料が不足し、食べものの値段が上がると、お金がなくて食べられないという人がますます増えることになります」と、真珠さん。
 水不足の問題も深刻です。世界では、5人に1人が、雨が降ったあとの水溜りや、川の水を飲むしかない環境で暮らしていると言われています。日本では、水道の蛇口をひねれば、ジャーッときれいな水が流れてくるにもかかわらず……。 

 また、作物を育てるにはお水が必要です。日本は食べものの6割を海外から輸入していることで、それを育てるために使われた水も買って輸入していることになるのです。


 本のなかには、地雷を踏んで片足をなくしたカンボジアのケオくん、戦争によってお父さんを殺され、難民になったスーダンのアハミドくん、子どもの兵士になったシエラレオネのソロリスくんなど、戦争によって厳しい暮らしを強いられている子どもの様子が紹介されています。日本に住む子どもたちには想像もできない状況ではないでしょうか。
 戦争がおきると難民になる人々が出てきます。そして、災害や環境問題から他の土地に逃れてくる難民も増えています。人が移動すると、そこに元々住んでいた人たちとの間で争いが起きることがあります。貧しさは犯罪やテロをまねき、それがまた戦いにつながり、ますます貧しくなってしまう人々もいます。『もったいないばあさん』は、「地球の問題を解決しないかぎり、いつまでたっても難民はなくならない」と警鐘を鳴らしています。

 貧しさから学校に行けず、働かされている子どもたちの数は、世界で約2億1800万人。学校に行かなければ読み書きや計算ができず、大人になっても貧しさからぬけられません。ストリートチルドレンの数も増えているそうです。日本ではお金もモノもあふれているのに、貧しい国では、学校に行かず働いても、その日の食べものも得られない子どもたちがいるのです。そして、都市が発展するごとに貧富の差はますます大きくなっています。
 いま、地球で起きている問題はすべて、命のことをまず一番大切に考えていたら起きなかったことばかり。なぜ日本の私たちは食べ残すほどの食べ物があって、お誕生日に何をかってもらうか迷うほどのものがあふれているのでしょう……。なぜ貧しい国の貧しい子どもたちは、その日食べる物さえ買えないのでしょうか……。

 本のなかで真珠さんは、次のように語りかけています。
「同じ地球の上に住む地球のなかま、地球人として、私たちはつながっています。(中略)地球の話、世界の子どもたちの話が、自分たちの暮らしとつながっていることを知り、世界の問題を解決するためにはどうすればいいかを、考えていただければと思います」


地球の食卓 by babycom

ちきゅうの食卓 INDEX

1.地産地消で地球にやさしい食スタイル

2.その食べもの捨てないで!フードロスを考える

3.食品ラベルから始めるエコライフ

4.「もったいない」のセンスで考える

5.伝えたい、豊かな自然環境と食文化


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