「気が抜けると風邪をひく」のは?
「気」は「エネルギー」?
深まりゆく秋を感じる今日この頃。1年でいちばんさわやかな季節ですが、目の前には本格的な風邪のシーズンが迫ってきています。でも、不思議なもので、どんなに風邪が流行していても、気が張っているときには、ひかなかったりしませんか?たとえば、仕事が忙しいとき。子どもが高い熱を出しているとき。大切な行事が目の前にせまっているとき……。
「風邪なんてひいていられない」という気合いが、どんな予防薬より効くことは誰もが経験的に知っています。ただ、往々にしてその気合いは長続きせず、ほっとした瞬間に「のどが痛い」「なんだか寒けがしてきた」ということに……。
いったいなぜ、気が抜けると風邪をひくのでしょう?
気が抜けるとき、体の中ではどんなことが起こっているのでしょう?
ここで注目して欲しいのが、「気」という言葉です。
「気」=「気持ち」、「気が抜ける」=「こころの緊張が緩んだ状態」と思われることが多いようですが、「気」という言葉には、じつはもっとたくさんの意味が含まれています。
ためしに、「気」のつく日本語を思い浮かべてみましょう。
「気が抜ける」「気が張る」「気合い」「気が強い」「気を失う」「気の毒」「元気」「気配」「気体」「気が散る」「気を吐く」「気を回す」「気が知れる」「気が短い」……辞書を引けば、まだまだ出てきそうです。
こうして並べてみると、「気」には、「気持ち」「こころ」以外に、「エネルギー」といったような意味があることが分かるはずです。「気」を「エネルギー」ととらえると、「気が抜けると風邪をひく理由」がちょっとだけ見えてくる気がしませんか?
「気」にはウイルスから体を守る力がある
中医学では、「気」というエネルギーに、さまざまな働きがあると考えています。
例えば、
・消化・吸収・排泄を正常に行う働き
・血をめぐらせる働き
・体温を保つ働き
・内臓を正常な位置に保つ働き
そして、
・ウイルスや細菌などの外敵から体を守るのも、気の仕事のひとつなのです。
この「ウイルスや細菌から体を守る働き」をもつ「気」は、特別に「衛気(えき)」と呼ばれています。抵抗力のようなもの、と考えると分かりやすいかもしれません。
この「衛気=まもる気」という名前を持つ「気」は、ふだんは体の表面(皮膚、鼻、口など)にみえないバリアを張りめぐらせて体を守っています。よく、風邪をひきそうなときに、体の表面がゾクゾクしたり、鼻がムズムズすることがありますが、これは、まさに「衛気」とウイルスが戦っていることを示す症状なのです。
ちなみに、ウイルスや細菌などの病理物質は、中医学では「邪(じゃ)」と呼ばれます。突然はじまり、変化しやすく、まるで自然界の「風」のような性質をもった「邪」。
それが「風邪」というわけです。
つまり、緊張から開放されて「気が抜けた」ときは、「衛気」も不足して、体表面が緩んだような状態になり、「風の邪」が「衛気」のバリアを簡単に突破して体の中に侵入する=風邪をひく、ということになります。
体の声に耳を傾けてみると
では、いつも気を張った状態でいれば、衛気も充実して風邪をひかないですむのか?というと、そうではありません。
ストレスや緊張で、いつも気がピン!と張りつめた状態になっていると、今度は「気滞」という状態が起こって、イライラしやすい、胸や脇腹が張る、ストレスに弱くなる、などの症状が表れ、血のめぐりが悪くなったり、内臓が機能低下を起こす原因にもなります。
「気が抜けると風邪をひく」のは、「気を緩める必要がある」と体が判断しているのだと考えることもできます。そういう意味では、風邪をひける体であることもたいせつ、といえるのかもしれません。
「気が抜けると風邪をひく理由」、なんとなく分かっていただけたでしょうか?えっ、言葉遊びのようで、よく分からない?
では、次回にて私の「
衛気不足体験」を披露しましょう!