お産のための中医学
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「中医学」は、日常生活に活かせる知恵の宝庫。妊娠・出産、育児の 強い味方でもあります。
10年以上にわたる取材で得た知恵の数々、ひとりじめは もったいない!ということで、 みなさまにも中医学の知恵をおすそ分け!です。

楽しい中医学 その3

女性の体のフシギ Part2

中医学には、妊娠中のトラブルに関するさまざまな解決法がある
妊娠・出産・授乳は「血」の大仕事


by 中医学ライター 高島系子 掲載:2003年5月

中医学には、妊娠中のトラブルに関するさまざまな解決法がある

さて、今回は再び妊娠・出産の話です。
中医学的・基礎体温を見つめるようになって数年後、私は妊娠しました。妊娠は、自分の体を見つめ直す良いきっかけだと言われますが、私の場合もまさにそうでした。どんどん変化していく体に夢中になり、今考えると恥ずかしいくらいに自分の体をかわいがっていたような気がします。また、もともと体を動かすのは苦手なのですが、妊娠中だけは平気で何キロも歩いて体力を養っていまし た。

妊娠中のトラブルに関しても、
「つわり」がひどかったら、まずは生姜+黒砂糖か、古くからつわりに使われてきた『小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)』や、『香砂六君子湯(こうさりっくんしとう)』を試してみよう。それでダメだったら、妊娠の維持に関係する「腎」の機能が低下しているせいかもしれないので、中医師にみてもらおう。
妊娠中の貧血やこむら返り、便秘、不眠などは、「血」が不足しているために起こることが多いから、「補血」作用のあるものをたっぷり食べておこう。
おなかの張りや痛みが気になったら、まずは「安胎作用」のある漢方薬 を、中医師に相談して出してもらおう。などなど、準備万端ととのえていたのですが、幸いつわりも貧血もなく、精神的にも充実した妊娠生活を送ることができました。

一度だけ、ひどい風邪をひいてつらい思いをし、「妊娠中はいつもと体の状態が違うため、風邪の経過も表れる症状もふだんとは違ってくる」 ということを身をもって体験。こういうときこそ中医学!ということで、中医師に相談し、そのときの体の状態に合わせて漢方薬を処方してもらいました。
妊娠中は「薬がのめないから」と、風邪をひいてもひたすら耐える、あるいは、「気休めに漢方薬でも」という人が多いのかもしれません。
でも、もし「気休め」にしかならないのなら、その漢方薬はそのときの体の状態に合っていない証拠。合う薬なら、一包のんだだけでも何らかの効果を実感することができます。ただ、妊娠中は飲まないほうがいい 漢方薬もありますので、やはり専門家に相談して薬を選ぶのが正解です。

こんなふうに、楽しく元気に過ごした妊娠期間でしたが、産後には思わぬことが待っていました。


妊娠・出産・授乳は「血」の大仕事

出産自体はなんのトラブルもなく、精神的にも満足のいくお産だったのですが、「産後は、赤ちゃんのことで精いっぱいで、自分の体はかまえ ない」という事実に気づいたのは、うかつなことに、退院して家に帰ってからのことでした。

妊娠・出産・授乳は、「血」を大量に消費する体の大仕事です。 妊娠中は、おなかの赤ちゃんを育てるために、今まで以上に血が必要になりますし、出産のあとはしばらく悪露による出血が続きます。そし て、母乳を体の中でつくるのも血の役目なのです(なお、中医学でいう 「血」は、西洋医学の血液とは少し解釈が異なります)。 だから、出産後は「血の余り物」である髪の毛がごそっと抜けたりしますよね? これは、いかに血ががんばったか!という証しでもあるのです。 そして、出産では「血」だけでなく、大量の汗とともにからだのエネルギー源である「気」も消耗されます。そのため、産後直後は気と血が極端に不足した状態となるのです。さらに、悪露が順調に出きらないと、全身の血のめぐりが悪くなる原因にもなります。 このような「気血の不足」と「血の滞り」をあとあとまで残さないためには、この1ヶ月間の養生がとっても大切なのです。

というわけで、中医師から聞いていた「産後の過ごし方」は、主に次のようなものでした。

・冷たい水に触らない。体を冷やすものも食べない。
・薄着をしない。足(特に足首とカカト)は冷やさない。
・イライラしない。
・いくら寝ても寝過ぎることはない。たっぷりと睡眠を。
・エネルギーと血を補う食べものと、血のめぐりをよくする食べものを 食べる。
・消化しやすく、あっさりしたものを食べる。
・目はできるだけ休める。



すべての人の産後を快適にしたい!

生理がふだんの掃除だとすれば、出産は一生に何度とない体の大掃除で す。このチャンスに出すものをきっちり出して、産後はじっくりとエネ ルギーと血の補給に努めれば、その後の病気予防や更年期障害の予防につながります。

出産年齢が比較的高かった私にとっては、まさに一生に一度のチャン ス!出産で私も生まれ変わろう!と、気合いは十分。台所仕事をしなくて済むように、出産前にたくさんお惣菜を作って冷凍室にストックし、 入院中のスリッパはカカトを包んだタイプのものを選ぶという念の入れようでしたが、この時点では「赤ちゃんのいる生活」のことがまるで分 かっていませんでした。

・とにかく大量の洗濯物!
  →冷たい水をまったく触らないというわけにはいかない
・夜中もしょっちゅう起こされるうえ、おっぱい&オムツ替えに 30分はかかる
  →慢性的睡眠不足
・授乳をしているとおなかが空く
  →消化のいいものばかり用意していたので、冷凍室はあっという間に
   カラッポ
・赤ちゃんはわたしを思うままにコントロールする
  →身も心もヘトヘトに


などなど、守りたくても守れないことがたくさんあることに気づき、自 分ではどうにもコントロールできない状態に。周囲の助けを借りてなんとか切り抜けたものの、産後の疲れをその後の体にどど〜んと残す結果となってしまったのでした。
母親が心身ともに元気であることが、赤ちゃんにとってもいちばんなの に、充分な休養をとることさえできない産後。そのうえ、私のようにタブーに縛られた状態になると、「やっちゃいけないことをやっちゃってる〜」という思いばかりが先行し、かえってストレスをためることにもなります。
今思えば、養生ができないことを中医師に相談して、他の対処法(体の 状態に合わせた漢方薬を用いるなど)を教えてもらえばよかったのですが、この時期、自分のことはすべて後回しになってしまっていました。 いつまで経っても体調が元に戻らないことに不安を覚え、今こそ漢方薬や鍼灸による治療を受けておくべきだ、と気づいたのは、産後半年以上 経ってからのことだったと思います。

すべての人がもっと産後を快適に過ごせるように、私にできることはないだろうか?そのとき、中医学の知恵は、どのような形で活かすことができるのだろう? 出産以来、ずっとこのことを考え続けてきました。そして、たどり着いたのが、「助産師さんと中医学をつなげよう!」ということでした。
助産師さんは、妊娠〜出産だけでなく、産後も頼れる存在です。私自身も、本当に何度助けられたことか……。助産師さんのアドバイス&マッサージがなかったら、私の産後はもっともっと辛いものとなっていたこ とでしょう。
お産に関するたくさんの知恵を持っている助産婦さんに、中医学のことも知ってもらい、それぞれの人の妊娠・出産・産後の状況に合わせてうまくアレンジしてもらえたら、どんなに心強いだろう!と思ったのです。
自分の経験や取材を通して、漢方薬(日本では食品扱いになっているもの)や、お灸を経験的に用いる助産師さんが多いことを知ったのも、きっかけのひとつになりました。
こうしてスタートさせたのが、「妊娠・出産・育児にかかわる人々と、中医学をつなげる活動」です。プロ(助産師)とプロ(中医師)をつなげていくばかりでなく、妊娠〜出産〜産後、そして子育てをするすべての人たちに、私なりに中医学の情報を提供していきたいと思っています。


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監修/医学博士・産婦人科医師(故)進 純郎先生(監修当時)葛飾赤十字産院院長




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