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ロサンゼルスのお産事情(2)
出産
予定日の2週間近く前の定期検診で、「体の方は準備ができているようなのでいつ生まれてもいいです。来週まだ生まれていなかったら、また検診に来てください」と言われ、そんなに早く生まれるのかと素人考えで疑ってしまいました。
しかし、予定日までまだ1週間以上あるその週末の朝、妻が腹痛を訴えました。休日ではあったのですが、昼まで待って、先生の所に電話をかけると、電話では判断できないので出産予定病院に行って、陣痛かどうか診てもらうようにと、指示されました。そこで陣痛ではないというのであればまた帰ってくれば良いとのことでした。結果は、黒で、陣痛の間隔は既に3分半から4分で、その日のうちにも子供が生まれるだろうということでした。
尚、こちらでは陣痛の間隔が5分以内でなければ、しばらくは大丈夫だろうということで、病院に行っても帰される事があります。アメリカの知人の中には、陣痛が起きてから、痛みの間隔が5分以内になるのを待ち過ぎ、無痛分娩を希望していたにもかかわらず病院についてからは既に生まれる直前であったため一時間足らずで出産した例もあります。この場合は出産が近過ぎて無痛分娩には出来なかったということです。
LDR
出産はLDR(Labor(陣痛), Delivery(出産),Recovery(回復)の頭文字をとったもの)と呼ばれる部屋で行い、日本のように分娩室に行くというものではありません。
これも、完全な個室で、ケーブルテレビやシャワーまでついている部屋です。LDRには妊婦以外に立ち合いの人が2名まで入ることができます。(夫、親など。)LDRに入った時点で産婦人科の先生が来てくれて、簡単に診察してくれます。ドクターはカジュアルな普段着姿で現れ、「がんばりましょう」と握手をした後、キラリと笑顔を見せ5分ほどで帰ってしまいました。その後は生まれる直前にまた来室します。その間は看護婦さんがすべて診ることになります。この辺りは分業というか専門化していると感じました。我々は昼の2時頃LDRに入り、夜の9時40分に男の子が生まれました。LDRへは、カメラの持ち込みも許されており、出産直後に取り上げてくれた先生と一緒に記念撮影をすることができます。また、人によってはビデオカメラを持ち込む場合もあるようです。
日本ではまだあまり普及していないようですが、こちらでは無痛分娩が非常にポピュラーです。90%以上の人が無痛分娩を選ぶということです。
出産は感動的体験でした。生まれた瞬間素早くドクターが赤ちゃんをチェックします。そしてドクターは「おめでとう。ストロングでヘルシーな赤ちゃんですよ。」とたった今母親になったばかりの妻に伝えてくれます。その一言が、どんなに彼女をほっとさせまた、喜ばせたかはいうまでもありません。
出産後はLDR Roomでしばらく休養した後、普通の病室に移されます。これも個室で出産した本人以外に一人だけその部屋に滞在することが出来ます。ですから、私は妻と同じ部屋に一晩泊めてもらいました。
赤ちゃんはLDRから新生児室に移されますが、希望すれば母親と同じ部屋に移してもらって、一緒に過ごすことができます。我々は、これが二人で静かに過ごすことのできる最後の夜だよ、という友人のアドバイスを聞いて赤ちゃんは一晩新生児室で預かってもらいました。いずれにせよ、翌日の早朝には赤ちゃんを連れてきてくれます。私たちは出産の興奮からなかなか寝つかれませんでした。朝になり赤ちゃんがやってきました。小さいのにくしゃみをしたりしていて、とてもかわいらしく思え、無事に出産が済んで良かったとドクターや看護婦さん、病院に対する感謝の気持で一杯でした。
出産に立ち会うことについて
こちらでは出産に立ち会うことは「当たり前」というまでになっており、病院見学などもみんな夫婦で来ており、見学で歩いて回る時などはほとんどのカップルが、手をつないで歩いています。私は妻の言葉の問題もあり、産婦人科検診から始まってすべての病院に付いて行きましたし、今も小児科には一緒に行くようにしています。そして、それはごく自然な行為として病院側にも受け取られているようです。
出産に実際に立ち会ってみて感じるのは、お産はとても大変なことであるということです。陣痛がひどくなってくると母親は苦しみます。正直なところかわいそうなくらいです。でもそこに一緒にいて、励まして、呼吸の手助けをしたり、手を握ったりする一連の共同作業を通して、二人で出産したというなにものにも代え難い実感を得ることができます。中には立ちあっている夫を殴ってしまったなどという話も聞きますが、立ち合いは妻にとっても心強かったようです。こちらでは、自分の妻が妊娠している時に「私達は妊娠している。」(We are pregnant. or We are expecting.)という表現を用いることがあります。ここにも、妊娠出産は母親だけのものではなく夫婦のものであるという考え方を見ることができます。出産に立ち会うことにより、このような考え方が、実体験としてより実感できます。
私は、今回出産に立ち会うことができて本当によかったと思っています。日本に帰国して第ニ子に恵まれるチャンスがあったら、分娩室に入れてもらいたいと思います。(ただ、日本では仕事や病院の都合で難しいかもしれませんね。)
掲載:1997年