地球に負担をかけない食べ方「地産地消」
私たちの食卓に並ぶ食べ物は、想像以上に多くのエネルギーを使って作られています。
使うエネルギーが少なければ、それだけ地球環境にもやさしい食べ物といえます。地球に負担をかけない食スタイル、「
地産地消」について紹介します。
地球にもわたしにもやさしい食生活とは
「身土不二」という言葉があります。「身体と土(風土)は一体であり、不可分である」、つまり、風土に根ざした旬の食べものを育てて食べることで、健康に生きられるということを表しています。
岡嵜さんが取材中繰り返していたのが、「我が家では特別なことは何もしていない。当たり前の食事です」ということ。夏には夏の食材を食べるのがいちばん。火照ったからだを適度に冷やし、水分を補ってくれます。逆に寒い冬は、根菜をたっぷり摂ってからだを芯から温め、冷えを予防します。人間の身体と環境を調和させる役割を果たすのが、旬の食材なのです。
「身土不二」と切っても切り離せないのが、「地産地消」の考え方。地域で採れた作物をその地域で消費するという意味です。都会では、意外と市民菜園の人気が高く、自ら耕した畑の作物を手に入れるのはなかなか難しいのですが、地場野菜の直売所などは探してみると意外とあるものです。露地ものの野菜がスーパーなどよりも格安で手に入り、しかもたいていは朝採りの新鮮なものばかり。旬の野菜はビタミンやミネラルなどの栄養分が豊富で、甘くて味が濃い。しかも、安くて美味しい。いいことづくめです。
空飛ぶ食材でなく、近くで採れた野菜を選ぼう
ところが日本の食の現状は、「地産地消」とはまったく異なる傾向を示しています。8月に公表された2007年度の食料自給率は40%(カロリーベース)。40%を割り込んだ前年度よりは回復しましたが、それでも食料の60%は海外から輸入していることになります。大型の貨物船や航空便などに載せられ、大量のエネルギーを投入して運ばれてくる食材たち。もちろん収穫してからの時間も経っているため鮮度も落ち、保存するために冷蔵や冷凍などのエネルギー、あるいは添加物を必要とします。
食料自給率と「フードマイレージ」は切っても切れない関係にあります。「フードマイレージ」とは「フード=食べもの」と「マイレージ=輸送距離」をかけあわせた造語で、輸入相手国別の食料輸入量×輸入相手国から輸入国までの輸送距離で計算します。農林水産研究所の調査によると、2000年の日本のフードマイレージは約5000億t-km。これは、世界でも断トツのナンバーワンです。お隣の韓国が約1500億t-km、アメリカは1400億t-kmということから考えても大きすぎる数字です。食料だけでなく、多くのエネルギーを輸入しているということにもなります。
食料という名の石油を食べている?
では、輸入食材でなければ、エネルギーを大量に消費することもないのでしょうか。実は、国内でつくられている食品も、石油エネルギーに依存しているといっても過言ではありません。例えば、ハウス栽培には暖房や照明などにエネルギーが費やされますし、トラクターなどの農機具も石油系の燃料で動きます。トラックでの輸送エネルギーや、農業資材、包装材などを加えると、食べものにはかなりの量の石油が使われています。
もちろん、食料生産を効率化することは必要不可欠ですが、本当にこんなに多くのエネルギーが必要なのでしょうか。例えば、寒い時季にトマトを食べたいと消費者が望めば、農家はそれに応えるために大量の暖房エネルギーを費やしてハウス栽培をしなければなりません。野菜は一つ一つビニールに包まれている必要はあるのでしょうか。好きな時に好きなものを食べたい。色と形が揃った野菜がほしい……。消費者が求める食材がこれでは、食料を取り巻くエネルギー事情は悪化するばかりです。
「地産地消」をキーワードに食材を選ぼう
地域で採れた旬のものは、形や見栄えは今一つかもしれませんが、飛びっきり美味しく、からだにもいい。使うエネルギーは、太陽の光と水のほかは、ほんの少しだけ。岡嵜さん一家の考え方の中心には、近くで採れた野菜を食べるという、「地産地消」の考え方が根づいており、それを毎日実感している子どもたちの表情は、とても生き生きしていました。
畑ができる人はほんの一握りですが、地域の野菜を選んで食べることは、ちょっとアンテナを張れば誰にでもできます。例えスーパーで買い物をするとしても、なるべく近くで採れたものを買うことで、エネルギーを節約できたことになります。そして、地域で野菜をつくっている人たちの応援にもなりますね。「地産地消」の言葉を頭において、ちょっぴりだけでも「地球にいいこと」=「家族にいいこと」を始めてみませんか。