(掲載:2004年10月/解説:上田昌文)
※1
注意欠陥多動性障害(ADHD)
Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder。知能は正常だが、注意力、記憶力、集中力にかける行動障害。学校では授業に集中できない、着席できない、順番が待てないなどの問題行動が起きやすくなる。
※2
ADHDについて
■2002年2月に発表された厚生労働省の調査結果より
ADHDに関する全国規模の初めての調査。2001年2〜3月にかけて全国から抽出した小学校1000校の養護教諭を対象に実施、563校(児童数約17万4300人)から回答を得、さらに全国531の病院と、80の医学部精神科にも調査票を配布し、約6割から回答を得た。調査結果によると、小学校の養護教諭が「ADHDと思われる」と答えた児童数は648人で、これは1000人当たり3.7人、小学校1校当たり1.31人という計算になる。学年別で見ると、1、2年生が1000人当たり4.7人、3、4年生が4.1人、5、6年生が2.4人と低学年ほど比
率が高いことが分かった。
一方、「過去3年間に患者が増えた」と答えた小児科医は28.9%、精神科では、45.1%で、受診する患者の数も増えていることが判明。小児科と精神科ともに「減った」という回答はゼロだった。
■文部科学省2003年度の「今後の特別支援教育の在り方について」(最終報告書)より
2002年秋、文部科学省は、小、中学校を対象とした調査から、LD、ADHD、高機能自閉症をあわせて約6%という数を発表した。これを正しい統計値と見るにはまだ時期尚早だが、相当数のLD児、ADHD児が小、中学校で学んでいて、何らかの学習や生活の困難を抱えていることは確かだと思われる。
アトピー性皮膚炎
■愛知県の調査
愛知県で行われたアトピー性皮膚炎についての調査では、1981年に3.7%であったものが、1992年には8.7%と、約10年で2倍強に増加したとの報告もなされている。
■ATS−DLD(アメリカ胸部疾患学会肺疾患部会)日本版・改訂版
喘息以外のアレルギー疾患有症率調査は1992年と2002年に行っている。その結果はアレルギー性鼻炎:15.9%→20.5%、アトピー性皮膚炎:17.3%→13.8%、アレルギー性結膜炎:6.7%→9.8%、スギ花粉症:3.6%→5.7%、いずれか1つ以上のアレルギー疾患を有するもの:31.3%→34.1%であった。アトピー性皮膚炎以外のアレルギー疾患はすべて年齢が長ずるに従って有症率は高くなっており、かつ2002年の方が高率であった。
喘息
■全国患者調査
過去36年間の全国患者調査(指定統計第66号)の結果から、代表的なアレルギー疾患である「ぜん息」の推計受療率(人口10万人対)を見ると、一貫して増加傾向にあり、1996年(平成8年)の受療率は、調査がスタートした1953年(昭和28年)当時の約7倍に増加している。
■ATS−DLD(アメリカ胸部疾患学会肺疾患部会)日本版・改訂版
1982年(第1回survey,対象55,388人)、1992年(第2回survey,45,674人)、2002年(第3回survey,35,582人)の計3回、西日本11県の同一地域・同一小学校の1〜6年生児童を対象に行われた。喘息有症率は第1回:3.2%、第2回:4.6%、第3回:6.5%と増加。
■環境省の調査報告書
全国36地域約6万6千人の3歳児を対象に環境庁がおこなった平成9年度大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査報告(99.10.27発表)によると、喘鳴(ゼーゼー)を起こす子が平成8年度13.86%から平成9年度15.06%と増加、喘息の罹患率は平成8年度1.83%から平成9年度3.41%と約2倍になった。
■文部科学省の学校保健調査のデータから
喘息の発症率が過去20年をとってみると着実に上昇傾向にある。例えば1970年に幼稚園児における発症率は0.5%だったのが98年においては1.32%に上昇している。小学校においては同じく1970年に0.4%だったのが98年には2.26%へと5倍以上も増加し、中学校においては同時期に0.1%から1.63%へとなんと16倍にも増えている。高等学校も同じ傾向で同時期に0.1%から1.1%に激増している。
■文部科学省の学校保健調査より
小児喘息の被患率は平成6年度(94年)がもっとも高く、昭和50年代と比較すると2〜4倍にもなっている。また、厚生省が発表した93年10月時点の総患者数では106万6千人(男58万6千人、女48万人)と推計されており、人口の0.9%が医療機関にかかっているとしている。
1955年から93年までの38年間に喘息で病院に行った人の数は、7倍以上も増加している。疫学的な調査では、日本の人口の3%(360万人)が喘息患者だという研究結果が一般的に認められている。
アレルギー全般
■厚生労働省「アレルギー疾患の疫学に関する研究」
厚生省が1992〜1996年に行った「アレルギー疾患の疫学に関する研究」の結果によると、何らかのアレルギー疾患を持っている者は、乳幼児28.3%、小中学生32.6%、成人30.6%と、およそ国民の3人に1人がアレルギー疾患を持っていることが明らかにされた。
■東京都衛生局の調査
衛生局が1999年(平成11年)に、都内全域で、3歳児とその親を対象に行ったアレルギー疾患実態調査によると、3歳児のアレルギー疾患有症率は、全体で41.9%(ぜん息7.9%、アトピー性皮膚炎18.0%、アレルギー性鼻炎7.5%、食物アレルギー9.4%、じんましん15.0%)であった。
化学物質過敏症
「化学物質過敏症の重症国内患者は成人で70万人、未成年を含めれば100万人」(国立保健医療科学院報告より、毎日新聞2003年1月12日)
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物理因子、化学物質、生物因子
●暮らしのなかで接触する化学物質
住宅建材、衣服、家具/ホルムアルデヒド
タバコの副流煙/コチニン
プラスチックのおもちゃ/プラスチック樹脂から出るBPA
道路/排ガス
食品/ダイオキシン、水銀、食品添加物、残留農薬
電磁波/携帯電話、携帯タワー、パソコン、家電製品
●暮らしのなかで接触する生物的因子
カビ、ダニ、ノミ、蚊、ハエ、寄生虫