塩や砂糖の隠れた薬効
スーパーの調味料コーナーには、シチリア産だのブルターニュ産などといった塩が、所狭しと並んでいる。
いずれも、ミネラルを豊富に含んだ自然塩で、塩化ナトリウムの純度99%の化学塩に比べると、味わいははるかに複雑だ。そして、味だけでなく、体にとっても自然塩のほうがいい、というのが最近の風潮とあって、塩と呼ぶにはかなり高価なシロモノでもかなりよく売れているという。自然に存在するものと、そこから有効成分だけを抽出したものは、似て非なるもの、ということが認知されつつあるのだろう。この図式は、漢方薬vs西洋薬というのにも通じるところがあって、なかなか興味深い。
ところで、東洋医学では、塩や砂糖といった調味料にもそれぞれの薬効があると考えられている。塩の性質は「寒」、つまり、熱をとってくれる作用がある。歯ぐきが腫れたときや、目が赤くなったときに、塩で洗うという方法があるけれど、あれも塩の「寒」の性質を生かした先人の知恵といえるだろう。
黒砂糖と白砂糖には、別の役割がある
プレマタニティ世代にとって気になるのは、塩よりむしろ砂糖のほうかもしれない。甘いものは食べたいけれど、肥りたくないから…と、砂糖を敬遠する人も多いようだが、砂糖にも、実はいろんな薬効がある。
例えば、最近は洋菓子の世界でも人気上昇中の黒砂糖。中国では、冬向きの砂糖と言われていて、正月の餅菓子などによく使われる。黒砂糖には、体を温めたり、気(エネルギー)や血を補う作用があるからだ。聞くところによれば、冷えによる生理痛にも効くというから、放っておく手はない。
一方、日本では最近ちょっと人気低迷気味の白砂糖にも、黒砂糖とはまた違った薬効がある。黒砂糖と違い、体の熱をとったり、体の潤い不足を解消する作用があるので、のどが腫れて痛むときや、夏バテなどにはちょうどいいのだ。例えば、中国で夏によく食べる緑豆の甘粥は、必ず白砂糖で作る。味の問題だけでなく、暑さを乗りきるという薬膳的意味合いもあるわけだ。
また、日本では梅酒を作るときぐらいしか使わない氷砂糖も、中国ではかなり頻繁に登場する。肺を潤す力があるため、乾燥する秋には、同じく「潤肺」作用をもつ梨、白キクラゲ、百合根などと一緒に煮たり蒸したりして食べる。このデザートを食べていれば、空咳や声嗄れを予防することができるのだという。
今まで、摂りすぎの害ばかりが強調され、表舞台にはあまり登場しなかった塩や砂糖だけれど、こうして視点を変えてみると、けっこうおもしろいものである。
by 高島系子 2000-2002
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