冬は、動物も植物も活動が鈍くなる季節
寒くなるにつれて、体の動きはなんとなく鈍くなってくる。ふと気がつけば、春から秋にかけて目を楽しませてくれたベランダの草木も、借景の緑地も、なんとなく寂しい感じだし、友人宅のリスも、心なしか昼寝の時間が多くなった気がする。人間だって、動きが鈍って当然なのだ。
だけど、人間界の場合、動物のように冬眠するわけにもいかない(したいけど)。
それどころか、師走だ、新年会だと、いつも以上に忙しい生活が強いられる。社会生活を営んでいる以上、ある程度仕方がないことなのだが、よく考えてみると、他の生き物がみんなおとなしくしている中、人だけが活発に動くというのも、ちょっと不自然な気がしないでもない。
特別な健康法より、日々体に負担をかけない生活が大切
体感するのは案外難しいけれど、実は、自然界に季節がめぐってくるように、人間の体にもまた季節に応じた変化が起こっている。
「体の変化?犬の夏毛・冬毛じゃあるまいし」と思う人がいるかもしれないけれど、夏と冬では、毛穴の開き方も血のめぐりも、明らかに違っているのだ。
例えば、冬と夏の体感温度。冬といっても、部屋の温度はだいたい23〜25℃くらい。場所によっては、27℃くらいまで上がることもある。一方、夏の冷房温度はといえば、やっぱり23〜27℃。つまり、部屋の中にいる限り、冬も夏もさほど気温は変わらないのだ。
でも、いくら家の中といっても、1年中同じ格好をしている人はいないはず。たとえ27℃でも真冬にTシャツ一枚では肌寒く感じるし、冷房の20℃だったら、セーターを着込むほどではない。冬と夏とで、これほどまでに体感温度が違うのは、湿度や光といった条件の違いだけでなく、人の体にも「夏仕様」と「冬仕様」があるからに違いない。
東洋医学では、こういう自然界と人間とのかかわりを重視するところがあって、季節ごとの養生法なるものもちゃんとある。それによると、冬は蓄えの季節、つまり、1年のエネルギーを養うべきときなのだという。体を温め、「気」を補うような食事を心がけ、たっぷり睡眠をとるのが、1年を元気に過ごすコツなのだそうだ。
冬に動作が鈍くなるのも、「ちょっと休もうよ」という体からの合図なのかもしれない。だとすれば、せめて寝られるときは寝て、体を外側からも内側からも温め、「冬仕様」になっている体に負担をかけないようにしたい。
これは、妊娠・出産を控えている人にとっても重要なこと。体を整えるためには、特別な健康法を実行するより、日々体に負担をかけない生活を送るほうが、ずっと効果的なのだ。
だからといって、冬にせっせと食いだめ…というのはNG。エネルギーどころか、よぶんな脂肪まで蓄えてしまうことになる。お正月や新年会ではくれぐれもご用心を。
by 高島系子 2000-2002
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