アメリカ不妊事情レポート-3
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ニューヨーク、ボストン、ロスアンジェルスで不妊治療を取材。 2002.12月

ボストンIVFセンター(2)

「広がる不妊治療の選択肢」

IVFセンター2000年度 統計表

広がる不妊治療の選択肢

先端的生殖補助医療のゆくえ



ボストンIVFセンターでは、年間3000例以上の治療を行なっている。統計表は2000年のものだが、患者は年々増える傾向にあり、その治療数や成功率も高まっている。
けれどその治療費は、日本に比べて高い。

この中に3,500個の胚が凍結されている。保存は3年間。それ以降は毎年保存料がかかる。

「治療費は、治療内容によっても、クリニックによっても異なりますが、IVF の複雑なものは10000$近くになります。何回挑戦するかは、治療を受けるカップルの希望や、施設の判断によっても違いがあります。ボストンIVFセンターでは、IVF は1回 7500$。3回で15000$というパッケージも設けています。IVF で成功した人の実施回数率はおよそ1.2〜1.8回と言われているので、コストのリスクヘッジを考えて、治療回数を判断しています。検査の結果、2回以上治療が必要だと見込まれるカップルの場合は、パッケージを選択することが多いようです。

マサチューセッツ州では、未婚、既婚を問わず、プライベート保険で治療費をまかなうことができます。州によっては、未婚者には保険は摘要できないこともあります。しかしこれは公的な保険ではないので、すべての人に適用されるわけではありません。また、プライベートな保険でも、治療内容によって適応が異なる場合もあります」
同センターでは体外受精、ギフト法のほか、卵ドナー、精子ドナーによる治療を行なっているが、説明書には授精卵の移植は行なっていないと記されている。代理母への移植は積極的には行なわれていないようだ。日本でも現在、卵の提供が検討されているが、アメリカでは、卵ドナーはかなり一般的な治療の選択肢のひとつになっている。
「2000年の統計では、3114件の治療が行なわれ、そのうち158件が卵のドナー提供を受けています。その後さらに数は増え、年間およそ200例ほどになっています。一方、顕微授精(ICSI)が積極的に行なわれるようになったので、精子ドナーに頼る人はひじょうに少なくなっています。
精子は一般的には、マスターベーションによって精液の中から採取しますが、精子の数が極端に少ない場合には、精嚢から取り出すことが可能になりました。顕微授精の場合には、極端に言えば精子が1匹でもいれば、それを卵子に注入することができる。精子の冷凍保存が難しかった時代には、その日に移植を行なわなければなりませんでしたが、5〜6年前から冷凍保存が可能になりました」

卵のドナーは、ボストン市内にいくつかあるエージェントが、ドナー(提供者)とレシピエント(卵を受ける側)を結ぶ役目をしている。卵のドナー提供には、医療的な治療と同時に、法的な契約を交わす必要があるため、弁護士やソーシャルワーカー、セラピストなどが不可欠な存在となる。
卵の提供者になれるのは、若い健康な女性。エージェントがドナーを募り、セラピストがその女性がドナーに適切であるかどうかを面接によって判断する。弁護士は提供者とレシピエント、双方に必要な契約書を作成する。
ボストンの場合、エッグドナーに必要な経費は4000〜5000$。ニューヨークでは7000〜75000$。提供者は、1ケ月ほどのホルモン治療を受けたあと、1回に10~20個の卵が採取される。
レシピエントは、写真やデータなどから、提供者の人種、肌の色、目の色、髪の色などを選ぶことができる。レシピエントの妻が白人の場合には白人、黒人の場合は黒人、ハーフの場合には同じようなハーフの卵ドナーを選ぶことができるのだ。卵の提供者は、最低でもカレッジを卒業している教育程度があることが求められることが多いという。
「ボストンでは、卵のドナーを集めるために、エージェンシーは対象をしぼった広告を打っています。たとえば、地下鉄で無料で配付している『メトロ・フリーペーパー』や、ほかにも若い女性の目につきやすい情報紙やインターネットのウェッブ・サイトなどに募集広告が掲載されています。
提供者は、匿名で社会的な背景がだいたいしかわからないこともありますし、レシピエントと手紙や電話でその後も連絡を取り合うケースもあり、ケースバイケースです。
卵ドナーの場合は、あとで親権の問題などが出てくることはほとんどありません。IVF センターでは、友人や知り合いから卵を提供してもらうケースもあり、その場合はエージェントとは関わりなく、金銭的なやりとりも生じません。
卵ドナーや代理母などについては、まだ法律的にはっきり整備されてない分野でもあり、難しい問題を含んでいます。西部劇のように、ワイルドな未開発な世界と言ってもいいかもしれません。未婚でドナー精子を受けて子どもをもつ人もいますし、レズビアンのカップルがドナー精子をバンクで買ったり、ゲイのカップルが代理母を頼むケースもあります。法律的に結婚していないカップルが、どちらかの遺伝子をもった子どもを欲しいと願うケースは、数はひじょうに少ないですが毎年、何例かあります。そうしたカップルへのドナー提供に関して、マサチューセッツ州では現時点では、法的にはなんのとり決めもなされていません。ですから、可能であるということです」

取材:きくちさかえ(2002年12月)

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