子どもと食べもの/胎内からはじめる食育

子どもと食べもの「胎内からはじめる食育」

3. 母乳は
赤ちゃんにとっての完全食品
【2】

取材協力・監修:福岡秀興 先生 (2006年6月掲載・2017年11月再編集)

母乳は赤ちゃんのアレルギーを予防する?
母乳に含まれる成分や、その役割、初乳とその後の母乳の違いなどを紹介しながら、母乳がアレルギーを予防する可能性について考えていきます。

1.赤ちゃんの状態によって成分が異なる初乳

2.完璧な母乳の栄養バランス

3.期待されるアレルギー予防効果

取材協力・監修:福岡秀興(ふくおか・ひでおき)先生
兵庫県出身。医学博士。東京大学大学院医学系研究科発達医科学助教授。米国内分泌学会・骨代謝学会正会員。日本内分泌学会代議員。産婦人科生殖内分泌学の視点より、妊娠中や思春期の女性の骨代謝の研究を行っている。第6次、第7次日本人の栄養所要量の策定委員。(プロフィールは取材当時)




初乳の時期が過ぎると、母乳はだんだんと色や成分が変わり、「成乳」と呼ばれる状態になっていきます。成乳には、たんぱく質、脂肪、乳糖、ビタミン、ミネラルといった栄養素以外に、体の発達を支える酵素やホルモン、赤ちゃんを病気から守る免疫物質や抗菌物質などが含まれています。

成乳の栄養は、1日のうちの時間帯によって、あるいは、1回の授乳の長さによっても変わります。それぞれの栄養素には、次のような特徴があります。

●たんぱく質
母乳中のたんぱく質は、牛乳に含まれるたんぱく質とは組成が異なります。母乳に多く含まれる乳清(ホエーたんぱく)は、牛乳に多く含まれるカゼインより、人の赤ちゃんにとって消化しやすいたんぱく質で、栄養価も高いのが特徴です。なお、母乳中のたんぱく質の濃度は、母親が食べるものによって変化することはありません。

●脂肪
母乳中の脂肪は、赤ちゃんにとって主要なエネルギー源です。脂肪の濃度は、母親の食事に影響されるため、授乳のたびに変化しています。また、1回の授乳の中では、授乳のはじめのほうが脂肪濃度が低く、後半の母乳には脂肪がたっぷり含まれています。脳の成長に必要なDHA(ドコサヘキサエン酸)やAA(アラキドン酸)という長鎖脂肪酸が含まれているのが特徴のひとつです。
なお、母乳中には、脂肪分解酵素のリパーゼも含まれているため、脂肪は効率良く消化されて赤ちゃんの栄養となることができます。

●乳糖
母乳の中には、牛乳の1.5倍の乳糖が含まれています。乳糖は一定のペースで分解されてエネルギーとなるため、ショ糖(砂糖)やその他の糖分と比べ、急激に血糖値を上げるなどの問題を起こさないのが特徴です。また、乳糖には、カルシウムの吸収を助ける、ビフィズス菌の成長をうながす、といった働きもあります。

●ビタミンとミネラル
母乳中のビタミンやミネラルは、赤ちゃんの体の働きにふさわしいバランスで含まれていると考えられています。例えば、母乳に含まれる鉄分の量は決して多くはありませんが、約50%が赤ちゃんの腸管から吸収されます。牛乳の鉄分の吸収率が10%であることを考えると、非常に効率がよいといえます。
実際に、生後6カ月以上母乳で育った赤ちゃんには、鉄欠乏性貧血は非常にまれです。



母乳は、赤ちゃんにとっての完全食品であるばかりでなく、赤ちゃんの体を病気から守るという大きな役割があります。特に、貧困な状態にある赤ちゃんにとっては、まさに母乳は「命綱」であることが分かっています。
例えば、ブラジルの大都市での調査では、母乳を与えられなかった赤ちゃんは、母乳で育った赤ちゃんに比べて、下痢による死亡率が14.2倍、呼吸器感染症による死亡率が3.6倍であったという結果が出ています。また、バングラデシュでの調査では、母乳育ちの赤ちゃんは、重症のコレラにかかる割合が70%も少なく、また、かかってもひどい症状が出にくいことが分かりました。

豊かで衛生的な国である日本においては、赤ちゃんの体を守る母乳の役割は、それほど大きくないと思われるかもしれません。しかし、母乳のメリットはそれだけではありません。近年増えているアレルギーを、予防する可能性が示唆されるようになってきたのです。

次回は、宮城県立こども病院の堺武男先生のお話を交えながら、母乳とアレルギーについてスポットを当てて紹介します。

【参考】
●「改訂版 誰でもできる母乳育児」 ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル メディカ出版 1994
●UNICEF/WHO 母乳育児支援ガイド 監訳:橋本武夫 翻訳:日本ラクテーション・コンサルタント協会 2003


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胎内からはじめる食育

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2胎児が危ない!危険な妊婦のダイエット

3母乳は赤ちゃんにとっての完全食品

4母乳は赤ちゃんの体をアレルギーから守る


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