子どもと食べもの/胎内からはじめる食育

子どもと食べもの「胎内からはじめる食育」

4. 母乳は赤ちゃんの体を
アレルギーから守る
【1】

取材協力・監修:堺武男先生(2006年7月掲載・2017年11月再編集)

母乳には、赤ちゃんの体をアレルギーから守る成分も含まれており、その他にも、数々の計り知れないメリットがあります。そのメリットと天秤にかけても、授乳をやめるべきなのでしょうか。

1.母乳とアレルギー用ミルクの違いは?

2.アレルギー児にも、やっぱり母乳

3.無理なく、楽しい母乳育児を

取材協力・監修:堺武男(さかい・たけお)先生
医学博士。宮城県立こども病院副院長。1977年に東北大学医学部卒業後、仙台市立病院小児科に勤務し、小児救急、新生児医療に従事した後、東北大学医学部助教授などを務め、2002年に現職。
専門は新生児学、特に呼吸生理学と小児発達学。母乳育児の推進、母子関係論、環境問題にも造詣が深い。共著に、「新母乳育児なんでもQ & A」(婦人生活社)、「小児の検査マニュアルとそのコツ」(診断と治療社)、監修書に「小さく生まれた赤ちゃんの安心育児」(ベネッセ)「イラストで学ぶ新生児の代表的疾患と生理 (メディカ出版)等がある。(プロフィールは取材当時)



母乳は赤ちゃんの体をアレルギーから守る

赤ちゃんに湿疹ができ、心配になって小児科に連れて行ったとき。血液検査の結果、食べものアレルギーがあることが分かり、「母乳にもアレルゲンが含まれているので、断乳したほうがよい」と言われたら、どうしますか?
「喜んで母乳をのんでいるし、分泌も順調なのに、やめなければいけないなんて」と戸惑う人がほとんどなのではないでしょうか。

赤ちゃんの体をアレルギーから守る母乳

乳には、母親が食べたものの成分が含まれており、その成分に赤ちゃんが反応することは、確かにある得ることです。しかし、母乳には、赤ちゃんの体をアレルギーから守る成分も含まれており、その他にも、数々の計り知れないメリットがあります。そのメリットと天秤にかけても、授乳をやめるべきなのでしょうか。

今回は、宮城県立こども病院の堺武男先生のお話を交えながら、母乳とアレルギーについて考えていきます。



アレルギーは、異種たんぱくを摂取することで起こります。赤ちゃんにとって、唯一の同種たんぱくは母乳です。母乳には、母親が食べた異種たんぱくの成分も含まれるため、その成分にアレルギー反応が出ることはあっても、母乳そのものにアレルギーを起こす赤ちゃんは1人もいません。これは、母親ではない女性の母乳(もらい乳)であっても同じことです。このことだけを考えても、人間の赤ちゃんが母乳を飲むのは、生物として、ごく自然で当たり前のことと言えるでしょう。

しかし、現実をみると、赤ちゃんにアレルギー反応が出た場合、母乳をやめるように指導されることが多いようです。その際に勧められる「アレルギー用ミルク」とは、母乳とどのような違いがあるのでしょうか。
「一般の人工乳は牛乳を原料として作られています。たんぱく質というものは、赤ちゃんの体にはいったときに、アミノ酸2個(ジペプチド)までしか分解されないという特徴があります。人間にとって異種たんぱくである牛乳が、アミノ酸2個までしか分解されていないと、赤ちゃんが体の中で抗原抗体反応が生まれ、アレルギーを起こす可能性があるのです。アレルギー用ミルクは、牛乳のたんぱく質を、アミノ酸1個(モノペプチド)というもっと小さな分子にまで分解することで、アレルギー反応が起こらないようにしよう、という発想で生まれた商品です。
しかし、そもそも人間は、なぜアミノ酸2個までしかたんぱく質を分解しないのか、ということを考える必要があります。これは、たんぱく質がアミノ酸1個になるまで分解されてしまうと、IgAなどの免疫物質の活性化が損なわれてしまうからなのです」。母乳に詳しい宮城県立こども病院の堺武男先生は、このように説明します。

シリーズ第3回でも紹介したように、母乳には、赤ちゃんを病気から守る特殊な免疫物質、分泌型免疫グロブリンA(IgA)が含まれています。同じ免疫物質でも、胎盤から赤ちゃんが受け取る免疫グロブリンG(IgG)が血中をめぐっているのとは異なり、分泌型IgAは、のどや呼吸器、胃腸などで直接病原菌と闘って、赤ちゃんの体を守っています。また、この免疫物質は、胃腸の粘膜に住み着くことで、異種たんぱくの侵入を防ぐ役割もあることが分かっています。
さらに、赤ちゃんが風邪などの病気になったときにも、母乳はすばらしい役目を果たします。赤ちゃんの病原体が母親に移ると、乳房の中で必要なIgAが作られて、赤ちゃんは母乳からその免疫物質を受け取ることができるのです。母乳は、ある意味治療薬の役割を果たしているといっても過言ではないでしょう。


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