子どもと食べもの/胎内からはじめる食育

子どもと食べもの「胎内からはじめる食育」

1. 胎内で
将来の病気の原因が作られる
【3】

取材協力・監修:福岡秀興 先生 (2006年4月掲載・2017年11月再編集)

妊娠中や授乳中にお母さんがとる栄養が不足すると、赤ちゃんの成長にダイレクトに影響を与えるばかりでなく、将来の病気(心臓病、糖尿病など)の原因を作り出してしまう可能性があることが、最近の研究で分かってきました。

1.妊娠中の栄養不足と、赤ちゃんの将来の関係

2.小さな赤ちゃんのリスク

3.体重だけでなく、バランスのよさもたいせつ

取材協力・監修:福岡秀興(ふくおか・ひでおき)先生
兵庫県出身。医学博士。東京大学大学院医学系研究科発達医科学助教授。米国内分泌学会・骨代謝学会正会員。日本内分泌学会代議員。産婦人科生殖内分泌学の視点より、妊娠中や思春期の女性の骨代謝の研究を行っている。第6次、第7次日本人の栄養所要量の策定委員。(プロフィールは取材当時)




では、小さく生まれた赤ちゃんのすべてが、将来の成人病のリスクを抱えることになるのでしょうか。

赤ちゃんと母乳-babycom-
「バーカー教授らは、英国で大規模調査を行い、生まれたときに2500gに満たなかった人ほど、その後の心疾患による死亡率が高いことを突き止めました。ただし、もっとも死亡率が高いのは、2270g未満と4540g以上であるという。ちょうどリスクはU字型を示していました。体重が少ないほど死亡率が高い、というほど話は単純ではありません。ただし、ある一定の範囲内であれば、2800gより3000g、3000gより3500gというように、生まれたときの体重が多いほど、リスクは少なくなるという結果が出ています。また、早産で生まれた未熟児よりも、予定日近くに生まれたにも関わらず2500g以下だった赤ちゃんのほうが、将来の心臓病のリスクが高くなるという結果もあります。この報告からは、単に体重が少ないのが問題なのではなく、『成長が抑制される』ことが大きく関係していることが分かります。

ただ、私たちの体を考えても分かるように、体重は必ずしもその人の体型や健康度を表すとは限りません。赤ちゃんの場合も、生まれたときの体重だけで、おなかの中にいたときの栄養状態や、特定の組織の発達具合までもが決まるわけではないのです。例えば、生まれたときの体重が同じでも、妊娠中のどの時期でもバランスよく栄養を得ることができた赤ちゃんもいれば、どこかの時期に、栄養不足に陥った赤ちゃんもいるはずです」(福岡先生)。

その後、各地での調査により、生まれたときの体重が少ないだけでなく、生まれてから1歳になるまでの乳児期に、頻繁に病気をしたり、栄養不良に陥ったりして、成長が抑制されていると、成人病になる確率が高くなることも分かってきました。
高血圧や心臓病、糖尿病などの成人病は、「生活習慣病」と呼ばれていますが、大人になってからの生活習慣だけによって発生する病気ではなく、胎児期と乳児期の栄養不良によって、代謝のメカニズムが不健康な状態となり、その素因に、栄養のとりすぎや運動不足などといった生活習慣が加わったために起こる、と考えられるようになってきているのです。

では、生まれてくる赤ちゃんのために、妊娠中にはどんなことに気をつけていけばよいのでしょうか?
次回は、もう少し詳しくバーカー説を追いながら、気になる妊娠中の体重増加と、赤ちゃんの出生体重との関係、妊娠中の食生活などを紹介していきます。


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胎内からはじめる食育

胎内からはじめる食育インデックス

1胎内で将来の病気の原因が作られる?

2胎児が危ない!危険な妊婦のダイエット

3母乳は赤ちゃんにとっての完全食品

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