子どもの発達と脳の不思議4
0歳から育てる「社会力」
談・門脇厚司(筑波学院大学長)
いじめや自殺、不登校など、子どもたちの危機的な状況が伝えられています。こうした背景には何があるのか。そして、子どもが健やかに育つには、大人たちは何をすればいいのか。
第4回は、「子どもに今、必要なのは社会力だ」と提言されている教育社会学者で、筑波学院大学長の門脇厚司先生にお話をうかがいました。
「漢字が読めるとか、ピアノがひけるとか、学校の成績がいいといったことは、ヒトの子が社会力のある人間になることに比べたら、どうでもいいといってもいいぐらいです。子どもを育てるとは、社会力のある人間に育てることなのです」と門脇先生は言います。
「人が人とつながり、社会をつくる力」=社会力という視点から、子育てへのヒントも含めて語っていただきました。
協力/NPO法人市民科学研究室 写真/Kikuchi Sakae
2007年4月掲載(専門家の肩書きは取材当時)
Part.1
「最近の子どもたちは変わった」とよく言われます。いじめや不登校、学級崩壊、ニート、ひきこもり…など、さまざまな現象が起きています。私はこのような変化を「他者と現実の喪失」ととらえています。※1…門脇先生がとりわけこの問題を確信したのは、1983年に横浜で少年たちが路上生活者を襲撃し、殺した事件であった。「少年たちは路上生活者のことを『黒いかたまり』と見て、『そのような“汚物”を処理してあげたことが、どうしていけないんだ』と言っていたのです。『黒いかたまりを処理する』とは、生きた人間に使う言葉ではない。日本の社会で生まれ育った子どもたちが、人間形成の根本の部分で明らかに変わり始めていると感じました」
図1:1世帯当たり人数の推移(総務庁統計局『国勢調査報告』各年版により作成)。門脇厚司『子どもの社会力』(岩波新書)より。
1世帯当たりの家族の人数は、1955年頃までは平均5人でした。統計によれば明治時代の初め頃までさかのぼっても、ほとんど変化がありません。ところが、高度経済成長が始まる1960年頃から年々少なくなり、最近では3人を切るところまで減っています(図1参照)。平均3人ということは、子どものいる家族の多くが、父親と母親と子ども1人ということでしょう。
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