子どもの発達と脳の不思議2
眠りが育てる子どもの脳と体と心
談・神山 潤(東京北社会保険病院副院長)
「24時間社会」が進み、大人のライフスタイルの変化にともなって、夜ふかしの子どもたちが増えています。保育園や幼稚園に通う子どものおよそ5割が、夜10時以降に寝るという報告もあります。 子どもにとって睡眠とは、健やかな成長に欠かせない生活習慣のひとつです。そして、食べ物と同じように、脳への“栄養素”のひとつでもあります。
連載第2回は、睡眠のメカニズムなどについて研究している脳科学者で、小児神経科医の神山潤先生にお話をうかがいました。
「ヒトは眠らないことには生きていけない生物である」
「『ヒトは生物』という視点が今の日本ではなおざりにされている」
著書『「夜ふかし」の脳科学―子どもの心と体を壊すもの』(中公新書ラクレ)の中で、神山先生は今の日本の子どもたちの睡眠事情に警告も発しています。眠りと子どもの脳の関係、さらに子どもの体と心に及ぼす影響について、語っていただきました。
協力/NPO法人市民科学研究室 写真/Kikuchi Sakae
2006年12月掲載(専門家の肩書きは取材当時)
Part.1
日本人の睡眠時間は年々、短くなっています。NHKの国民生活時間調査によると、1970年には平均7時間57分だったのが、2000年には7時間23分でした。毎年およそ1分ずつ短縮していることになります。深夜営業しているコンビニやファミレス、居酒屋などに出かけたり、テレビやインターネット、携帯電話などのメディアとの接触の増加…といった社会全体の「24時間化」が大きく影響しているといっていいでしょう。図1
夜10時以降も起きている子どもが増えている
表1 各国の子どもたちの平均就寝時間・起床時間
国名 | 調査年 | 調査対象年齢 | 就床時刻 | 起床時刻 |
スイス | 1984 | 3歳 | 19:38 | 07:00 |
フランス | 1991 | 3歳 | 20:00 | 07:18 |
イタリア | 1996 | 25〜48カ月 | 21:48 | 07:08 |
米国 | 2000 | 3歳 | 21:11 | 07:05 |
中国 | 1984 1999 | 幼児 幼児 | 21:44 21:46 | 06:21 06:55 |
仙台市周辺農村部 | 1999 | 42〜43カ月 | 21:15 | 07:01 |
仙台市内 | 1999 | 42〜43カ月 | 21:24 | 07:28 |
草加市 | 1999〜2000 | 3歳 | 21:44 | 07:48 |
(*1)イタリアの子どもの寝る時間が遅いのは、大家族制でおじいさんやおばあさんといっしょに暮らしていて、夕食をみんなでゆっくり食べる家族団らんのためだという。そのわりに早起きだが、イタリアではシエスタ(昼寝)の習慣があり、夜ふかしの分は昼寝で取り返しているとのこと。また、中国でも最近、「夜ふかし朝寝坊」が進んでいますが、日本よりはまだだいぶ早起きのようです。
図2 正常幼児の睡眠覚醒リズムの発達
(小児医学Vol.20 No.5 1987年10月 神山潤『「夜ふかし」の脳科学』から作成)
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