マタニティの歯のケア

歯育・子どもの歯を育てる

1. 赤ちゃんのために知っておきたい
マタニティの歯のケア【Part.2】

取材協力・監修:北原信也 先生(2006年9月掲載・2017年11月再編集)

妊婦検診の現場では、妊娠中の歯のケアや、胎児の歯胚(乳歯の芽)と母胎の栄養など、妊婦の歯と赤ちゃんの関係についての説明は、残念ながらほとんどなされていないのが現状です。
そのため、マタニティやその周囲では「妊婦は歯医者に行けない」「カルシウムを赤ちゃんに奪われてしまうから、産後は虫歯になりやすい」といった誤解が多いのです。
シリーズ1回目は、、マタニティの歯がどのような状態になっているのか、また、妊娠中の効果的な歯のケアについて、ノブデンタルオフィスの北原信也先生とともに学んでいきましょう。

【Part.1】妊娠中は歯医者に行けない、は間違い?!

【Part.2】歯周病が早産を引き起こす原因に?

【Part.3】つわりの時の歯のケア、どうしたらいいの?



歯周病で早産・低体重児出産のリスクが6倍

レントゲンや麻酔よりも、もっと気をつけなければならないのが、マタニティの歯周病。歯周病は年配の方が罹る病気、と思っている方も多いかもしれませんが、北原先生によると程度の大小こそあれ20代を含む成人で7〜8割の罹患率とのこと。マタニティにとっても他人事ではありません。さらに2005年、北海道医療大学歯学部の古市保志教授の疫学調査によって「歯周病にかかっている妊婦は、早産や低体重児を出産するリスクが高い」という調査結果が報告されました。

口の中に歯周病菌が増えると、免疫を担当する細胞から血中に「サイトカイン」という情報伝達物質が出されます。サイトカインとは細胞から体液中に分泌されるタンパク質のことで、その種類によってさまざまな働きをします。このサイトカインが過剰に分泌されると口腔内で炎症が起き、歯肉や歯骨が破壊され、歯周病が進みます。特に、サイトカインの一種であるインターロイキン1は、歯槽骨の破壊に関与し、早期低体重児を出産した母親の歯肉に多く含まれていることがわかりました。

サイトカインの血中濃度が上がると、妊婦の身体はすなわちそれを「出産開始のゴーサイン」とみなします。歯周病によるサイトカイン濃度の上昇を、身体が出産の準備が整ったと判断し、陣痛や子宮の収縮が起こって切迫早産や早産を引き起こす可能性が指摘されたのです。古市教授の調査では、歯周病の妊婦はそうでない妊婦に比べ、約5倍も早産のリスクが高かったことが明らかになりました。同様の研究が米国でもすでに行われており、歯周病の妊婦の早産や低体重児出産のリスクは6倍(初産であれば7倍)であることがわかりました。

チリでは、400人の妊婦を対象とした研究で、歯周病治療を行った妊婦とそうでない妊婦を比較すると、早産や低体重児出産の割合が5分の1に減ったことからも、歯周病治療が胎児を守るうえでいかに大切であるかがわかります。

「歯周病とは、歯肉の病気と思われがちですが、実は骨の病気でもあります。歯周病菌は嫌気性の細菌なので、空気にふれない歯肉の内部に入り込み、骨を破壊します。サイレント微生物と言われ、痛みや自覚症状が起こった時は病状がかなり進行した状態だということができます。歯周病に限らず、歯の病気はとにかくブラッシングで予防するしかありません」と、北原先生は話します。


マタニティの歯のケア

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北原 信也(きたはら・のぶや)先生(ノブデンタルオフィス院長)
顔、唇、歯、歯肉それぞれを科学的かつ審美的に分析し、一般治療から審美修復治療、メインテナンスプログラムにおけるまで、口腔プロデューサーとして治療・予防に全力を尽くす。著書や講演会も多数。歯のケアを通して子どもの知的発達を促すことを目的とした歯科医と教育カウンセラーによる日本初の「歯育」プロジェクト、ノブキッズ・プロジェクトの代表でもある。


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歯育・子どもの歯を育てるデンタルケア

歯育・子どもの歯を育てる インデックス

1.赤ちゃんのために知っておきたい
 マタニティの歯のケア

2.赤ちゃんの歯の健康は胎内からスタート

3.乳歯の生える時期と赤ちゃんの虫歯

4.0歳からの歯のケア

5.はじめての離乳食と歯の健康

6.よく噛んで、健康で頭のいい子に育てよう!

北原先生のワンポイント・アドバイス


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