帝王切開
おなかを切って、胎児を出す産科手術。母親や胎児になんらかのリスクがあり計画的に行われる場合と、出産中に急に胎児の心音が下がって仮死が疑われる場合に行われる緊急のものとがある。
麻酔を打ってから、手術が終わるまでの時間はおよそ3〜40分。手術としては、それほど難しいものではない。麻酔によって、手術中、母親の意識がはっきりしているものと、眠った状態になって、赤ちゃん誕生がわからないものとがある。
帝王切開の率は、アメリカでは全体の25%以上にもなると言われている。それに比べ、日本でははっきりした数字はないが、およそ10%ほどと言われている。それでも、過去30年間で3倍以上増えている。
帝王切開が多くなった理由のひとつとして、メディカル・エレクトロニクスの台頭が上げられている。分娩監視装置を始め、妊娠期に使われる超音波診断装置などの性能が高くなり、胎児のことが出産前からよくわかるようになってきた。また、何か問題が起こる前に、産科的処置を早め早めに施してより安全性を高めようという配慮から、予防的産科処置として帝王切開が増えてきたといえる。
麻酔(無痛)分娩
麻酔を使って陣痛の痛みをとる出産法。麻酔にも色々な種類があって、痛みの感じ方や母親の意識に違いがある。
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硬膜外麻酔:背中から細いチューブを刺し、継続的に麻酔を注入する。背中から腰のあたりにだけきく部分麻酔。母親の意識ははっきりしている。陣痛の早い段階から麻酔を使う場合と、陣痛がかなり進行してから(赤ちゃんが生れる少し前から)使う場合があり、痛みの感じ方が違う。
●全身麻酔:母親の意識がない状態で出産する。赤ちゃんが生まれる感覚はわからない。
●カクテル麻酔:いくつかの麻酔剤を陣痛の時期によって使い分ける方法。麻酔によって、母親の意識の状態も違う。
誘発分娩(ゆうはつぶんべん)
あらかじめ出産日を設定して、陣痛誘発剤や道具を使って子宮口を開き、陣痛を起こさせる。子宮頸管(子宮の出口)が開きやすくなっていること、産む側と医療者双方が同意していることが陣痛誘発を行う条件となる。胎児や母親にリスクがある場合などの医学的適応のほか、母親の希望や平日・日中に出産したほうが安全性が高いと考える施設などの社会的適応によっても行われている。
座位分娩(ざいぶんべん)
仰向けではなく、上体を起こした姿勢で出産する。分娩台そのものが、美容院のシャンプー台の椅子のようになっていて、腰かけた姿勢になる。分娩台の角度は好みによって変えられる。上体が起きているので、重力の助けをかりて胎児が降りやすくなり、いきむ方向もつかみやすい。また、子宮の内圧も高まる。
仰向けの姿勢は、背骨に沿って走る大静脈、大動脈を大きな子宮が圧迫して、胎盤への血流量が減少し、胎児への酸素供給が十分に行われなくなる可能性があるが、上体を起こした姿勢ではそれを避けることができる。
腰かけた姿勢は、医療スタッフと目線が同じ高さになるので、緊張感も少なく、仰向けの姿勢より分娩に対する意識も積極的になれる。生まれた赤ちゃんをすぐ見ることもできるなど、利点が多い。
参考文献/「イマーゴ」青土社 1994