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babycom birth:お産コラム

妊娠、出産は、はっきり言って“修行”です

by きくちさかえ


最近、自宅出産って増えているのかなあ。そう言えば、今年正月明けに突然立ち合うことになってしまったお産も自宅出産。そして、つい3日前も自宅出産につき合ってしまった私なのでした。

今年は、全国の80代のおばあさん助産婦を訪ねる旅をしているのだけれど、戦前から戦後に活躍した彼女たちの仕事場は、みんな自宅だった。みなそれぞれに、それはそれは大変なご苦労をしながら、お産を介助していらっしゃる。

私が住んでいる富士山麓の足和田村でも、自宅出産を介助していた最初で最後の助産婦さんがいらっしゃる。彼女が戦後、村に登場する以前、村の女たちはとりあげ婆さんによって出産していた。彼女は村のお産を取り仕切っていたばかりか、現在でも無医村のわが村で初めて医学的知識をもっている人だったから、病気や怪我の簡単な治療までしていたというのだからすごい。

夜中にお産で呼ばれると、富士五湖のひとつである西湖を、なんとボートを漕いで渡り、さらにひと山超えて、となりの集落へ走っていったという。しかも、冬は表氷点下13度を超える日もある地域での話。

しかし、今のように医療的バックアップが得られるわけでもなく、不幸な結果もないではなかった。昔の助産婦たちの話を聞いていると、どなたの話の中にも、そうした悲しい話は必ず出てくる。それを救ったのが、彗星のごとく登場した西洋医学なのでした。そのありがたさといったら、それはそれは・・・だったのでしょうね。

しかし、今も昔、みたいなことは現代の自宅出産にはないのだろうか。オランダのように、政府が自宅出産をバックアップしてくれているわけじゃなし。お産は急変することもある。
だからこそ、私のマタニティ・クラスでは、自宅や助産院で出産する人には、バックアップ病院を自分で決めて、健診にはなるべく両方にかかっておこう、と言っている。しかも、からだが異常な事態にならないように自分でやれることはすべてやるという条件がついた上での話になる。

つい最近、助産院で死産があったという悲しい話を聞いた。そうかと思えば、昨日の朝には、病院出産で帝王切開したら死産だったというリアルタイムの話が飛び込んできている。危険をどう回避するか、これは医療者も、産む側も真剣に自分のこととして考えなければならないこと。
「お産をロマンのように語る人は、『死』そのものをもロマンとして捕えているんだろうか」という厳しい意見も聞かれる。

「お産は『死』を意識する行為だ」と言った人もいる。現代の私たちは、どこか『死』を遠いものとして見ている。自宅出産は、そんな厳しい条件の中で行われることなんだということも、認識しておきたいよね。
だから、どうすればいいんだろう、と考え、できる限りのことをする。妊娠、出産は、ご修行(精神的にも肉体的にも非常に厳しいこと)だと、私は思うのです。
人生と同じように、甘くないのです。

きくちさかえ 掲載1996 更新:2000
(「自宅出産ねっとわーく」ニュースレター8月号に掲載/1998/11)

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監修/医学博士・産婦人科医師(故)進 純郎先生(監修当時)葛飾赤十字産院院長



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