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babycom birth:お産コラム

出産、医療の中のサービス

by きくちさかえ

家庭に子どもの数が少なくなったので、親の子どもに対する注目度は上昇している。お産も1回か2回のことだから、「ちょっとお金をかけて快適に」と思う人もいれば、「絶対にこだわって自分らしいお産がしたい」と思う人もいる。

医療機関もそうした妊婦のニーズに答えて、いろいろとサービスを提供するようになってきた。近ごろは、出産準備のための“母親学級”や“両親学級”のほかに、エクササイズのクラスを設ける施設も増えてきている。マタニティ・エアロビクスにマタニティ・ヨーガ。なんと熊本にはスイミング・プールまで院内に作ってしまった病院もある。

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エクササイズのみならず、胎教も妊婦には人気。早期教育とまではいかないまでも胎教クラスを設けたり、本格的なストリングスによる生演奏のコンサートを定期的に開いている医療施設もある。それぞれのニーズに合わせて、妊娠中からカルチャー奥様ができるしくみになっているのだ。

産院内の設備も充実させている施設が増えてきた。院内にレストランを作り、プロのシェフによるフランス料理のフルコースや、お頭付の鯛が出るお祝い膳など、グルメの入院生活を提供。まるでシティ・ホテルのような豪華な特別室を設けているところもある。
欧米では以前から「医療にも快適な環境を」と言われてきた。入院する部屋はもとより、分娩室も産む人の使いやすさを尊重して、ということで出来上がったのが“LDRシステム”だ。これは、Labor(陣痛)、Delivery(分娩)、Recovery (回復)の略語で、陣痛から分娩、産後2時間ほどを同じ部屋で過ごすことができるというもの。

陣痛の初めの頃は、ホテルのようなくつろいだ雰囲気の部屋で、いざ分娩が始まりそうになると、その部屋の棚や家具の中から医療機器が出てくるしくみになっている。分娩台も初めは木製のおしゃれなベッドなのに、あれよあれよという間に医療処置ができる分娩台に早変わりするスグレもの。

一般的には、お産で入院するとまず陣痛室、次に分娩室、赤ちゃんが産まれると回復室に移され、さらに入院する部屋へと産婦はあちこちに移動しなければならない。でも、LDRならひとつの部屋で過ごすことができるし、なにより部屋全体が産婦がリラックスできるようにと、病院くさくない環境を演出してくれているところがうれしい。

アメリカやヨーロッパでは、このLDR方式はかなり一般的だが、日本では残念ながらまだ一部の病産院でしかとり入れられていない。

掲載1996 婦人公論 1995.3月号 きくちさかえ 更新:2000


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監修/医学博士・産婦人科医師(故)進 純郎先生(監修当時)葛飾赤十字産院院長



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