| アメリカ在住、卵子提供で双子を出産して …太田美奈さん(仮名)
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聞き手・文/白井千晶 (インタビュー2011年5月)
ここでご紹介する太田美奈さんは、1回目の採卵で良くない結果だった時、「次のステップ」として卵子提供を勧められたそうです。
太田さんの環境では、体外受精におよそ2回失敗したら、卵子提供や他の方法を医師から勧められるのが一般的とのこと。
卵子提供に対する医療者や社会の態度や考えは、人の人生を大きく変えそうです。
太田美奈さん(仮名)
私は40代で卵子提供を受けて、妊娠・出産しました。
以前からアメリカに住んでいて、
エージェントを介して卵子提供を受け、双子を妊娠。現在、2児の母です。
卵子提供を決めたきっかけ
体外受精の結果をもらう時、医師から卵子提供を勧められたのがきっかけです。
不妊治療をはじめてから、タイミング療法を4周期、人工授精を3回。その間に検査をしました。次に体外受精を1回。
アメリカはステップアップが速いと思います。
この体外受精の時、卵子のグレードが良くなく、数も少なく着床しなかったため、医師に次のステップとして卵子提供を勧められました。また、私の通ったクリニックでは体外受精は45歳までと決まっていましたので焦りもありました。
医師から「遺伝的にはつながりがなくても、あなたの血や肉を糧に、あなたの中で子どもは育つのだから、120%あなたの子どもよ」と言われたことが、ずっと心に残っていました。
それでもすぐに実行したのではなく、悩む期間がありました。
卵子提供エージェントにも行きましたが、この時は、自分が実行するとは考えていませんでした。
別の病院で体外受精をしましたが、やはり卵子の質が悪くて着床せず、医師には同じ治療をしても同じ結果になる可能性が大きいと言われました。
里親も考えましたが年齢的に断念、私自身は、夫婦ふたりの人生も受け入れられると思っていたのですが、夫の強い願いを聞いて、私にも、家族をもちたいという気持ちが改めて湧きました。
卵子提供の実施
日本人の卵子提供をおこなっているエージェントの中から選びました。
ドナーの登録数は少ないけれども、ドナーさんを大切にしていて、また提携しているクリニックも信頼がおけるところです。
ドナーさんは、以前に卵子提供をして成功したことがある、日本の方を希望しました。
プロフィールを拝見しましたが、好感の持てる女性だと感じました。
受精卵を2個移植して、双子を授かりました。
受精卵の状態がとても良くて、今回は妊娠・出産できるという確信にも近い安心感が初めてありました。
それでも、妊娠中は、これで良かったのか、もっともっと悩まなければならなかったのではないか、と考えたりしました。
ご存じのように、アメリカでは、養子縁組は日本より一般的でポジティブに受け止められていますし、卵子提供もめずらしいことではありません。
でも私自身は、誰にでもオープンに話せるわけではない気持ちもあります。
子どもが生まれて
生まれた直後に抱いた時、感動で涙が出て止まりませんでした。
子どもを見るたび、抱くたびに、愛おしさが湧いてきます。
ドナーさんに似ていると感じることもありますが、夫によく似ています。
告知について
親友や親族の一部には、卵子提供のことを話しています。
卵子提供を受けたことで、特別な対応を受けていると感じたことはありません。
子どもには、就学前に話そうと思っていますし、
継続して家族で話す機会を設けていきたいと思っています。
幸い、身近に遺伝的つながりのない親子がおり、また、双子なので、きょうだい同士、話もできるかもしれません。
一方で、周囲に同じ状況の方がいらっしゃらないので、これから先、子どもがどのように受け止めるか不安な面もあります。
いつどのように話すかということは、夫婦で決めてはいません。
子どもの性格や受け止め方にもよると思いますので、就学前には伝えて継続的に話していくんだという心づもりで、しっかり子どもをみていきたいと夫は言っています。
私たちのドナーさんは情報開示を希望していないので、現在は子どもに情報を伝えることは考えていませんが、将来子どもが希望したら、私たちがもっている情報はすべて伝えるつもりです。
ドナーさん自身、卵子を提供したことは誰にでも言えるわけではないでしょうし、そういう意味でドナーさんも秘密を抱えており、また、こんな幸せを与えてくださったことに本当に感謝しています。
お金だけではできない、精神的にも身体的にも負担がかかることをして下さっていると思っています。
日本の制度について
日本でできなくて、海外でできるとなると、海外に行く人が多くなるのは当然の結果だと思います。
需要が先に行って、制度が追いつかないと、海外で卵子提供を受けることが多くなり、トラブルも多くなるのではないでしょうか。
日本から海外へは、年齢が高くなってから卵子提供を受けに渡航すると聞いています。
限界まで日本で体外受精などを頑張ってこられたのだと思いますが、母子の身体にとっては、少し早い方が負担が少ないのではないかと思います。
補足 (白井千晶)
太田さんがお住まいのところでは、卵子提供に関する判例に沿って契約内容が作成されるため、法的に安全だと言われています。20年近くおこなわれているとのことで、医師も、一般の方も、卵子提供に対する抵抗感は小さいようです。告白しても「あなたもそうなの」といった反応だったそうです。また、自助グループもあるとのことでした。