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不妊体験・不妊治療レポート
不妊を考える「ウノトリはやってくる?」


ビギナーのための「不妊検査と治療法」
 石原 珠紀 先生(窪谷産婦人科 産婦人科医)



不妊の原因

まずは検査から

精子の検査

治療のステップ

治療法のインフォームド・チョイス

<人工受精><体外受精><顕微受精>


不妊の原因

 不妊治療を受ける患者さんの数は、ここ10年間でとても増えてきました。現在では、生まれてくる赤ちゃんの1割ほどが不妊治療を受けた上で授かったお子さんだとも言われています。
 不妊で外来を訪れる方は、はじめからカップルでいらっしゃる方もいれば、夫にないしょでいらっしゃる女性もいます。赤ちゃんが欲しいと思ってから2年くらいたってから来られる方もいますし、30代の方は結婚されてから1年や半年という方もいます。はじめて来るまでには、いろいろ本を読まれたり、情報を集め、みなさん勉強されています。どうしても赤ちゃんが欲しくて、考えた末にいらっしゃるのでしょう。

 不妊の原因はさまざまですが、大きくわけると排卵が正しく行われず生理が不順となる排卵障害。卵管がつまっている状態の卵管障害。女性側が精子の動きをとめてしまう様な抗体を持っている、つまり精子との相性が悪い場合などがあります。男性の因子としては、精子の数が少なかったり、運動性に乏しかったり、奇形精子が多い場合などがあります。

 約3割は検査をしても原因がわからない場合があります。そういう中には互いに忙しくて、セックスするタイミングがなかなか合わないとか、セックスレスのカップルもいらっしゃいます。


まずは検査から

 まず、初診で問診をして、からだの状態を検査することからはじめます。
 検査や治療の進め方は施設によってさまざまですが、おおよそ女性の場合は、まず生理3日目くらいにホルモン検査を行ないます。黄体刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、乳汁分泌ホルモン、女性ホルモンを血液検査で調べ、ホルモンのバランスに異常がないかどうかチェックします。次に、卵管がちゃんと通っているかどうか、卵管造影という検査をします。卵管造影をやる場合、クラミジア感染症があると、クラミジア菌が卵管炎の原因になることがあるので、まず子宮の入り口の頸管にクラミジアがないかどうか調べます。

 卵管造影は、生理の出血が終わってから排卵までのあいだ、生理が始まってから7日目から11日目くらいに行ないます。子宮内に細いカテーテルを入れ、子宮内に造影剤を注入してレントゲン写真をとり、子宮内腔や卵管をうつし、子宮内腔の異常、卵管通過性をみるものです。造影剤は圧力をかけて入れていくので、それだけで卵管の通りがよくなって、妊娠するケースもあります。また、排卵日付近では精子と子宮頸管粘液の相性をみる検査(ヒューナーテスト)を行います。これは深夜または早朝に夫婦生活をして翌日の朝一番で受診し、頸管粘液中に運動している精子がいるかどうか調べる検査です。

 検査は、排卵日に従ってスケジュールが決まってきますから、初診を受けるときには、問診と最初の検査が同時に行えるように、生理後、3〜5日目くらいで受診されるといいでしょう。クラミジア抗原検査やホルモン検査もそのとき行なうこともできます。


精子の検査

 男性の場合は、精子の検査をしますが、これも排卵日とのタイミングがあります。排卵のときには精液が一番いい状態であってほしいので、精液検査は排卵日のあとや生理中に行うのが良いでしょう。病院で精液をとっていただいく場合もありますし、病院と家とが近ければ家で精液をとっていただき、1時間以内に届けていただきます。

 1回の検査で状態が悪かった場合には、再検査になりますが、検査結果が悪いときにどのように夫に伝えればいいのか悩む方もいらっしゃいます。ご夫婦で来ていただいて、医師から説明を受けるほうがいいでしょう。


治療のステップ

 こうした検査を行なってから、次へのステップをどう進めていくか、医師と患者さんとで検討していくことになります。
 はじめのうちは基礎体温とホルモン検査、超音波検査の様子を見ながら、排卵日を予測して、自然妊娠を待ちます。排卵に問題がある場合には、排卵誘発剤を使って卵の状態を良くして、排卵を促します。排卵障害の程度は人によってさまざまなので、誘発剤の種類や処方はケースによっていろいろです。場合によっては、注射による治療も行なわれ、長期に渡ることもあります。

 こうしたことを経た上で妊娠しない場合や、女性の頸管粘液と男性の精子が相性があわない場合などは、人工受精になります。また、卵管がつまっているケースや、精子に問題があるケースなどは、体外受精や顕微受精を検討することになります。


治療法のインフォームド・チョイス

 人工受精、体外受精、顕微受精といった次の段階となる治療へは、その人のこれまでの治療の経過や状態によって検討されます。検査して治療を進めていくわけですが、ひとつの方法をトライして妊娠しなかった場合、あまり長期間同じ治療をくり返して様子をみるより、次の段階へ進んでいくほうがゴールがより近くなる場合もあります。

 検査や治療には、保険がききませんし、長期になれば経済的負担も大きくなります。また、痛みをともなう治療もあります。さらに体外受精、顕微受精になると、やはり抵抗を感じる方もいます。なるべく自然な形で妊娠したいから、そこまでして子どもはつくらなくてもいいと、拒否される方もけっこういらっしゃいます。
 治療の選択にあたっては、インフォームドチョイスを十分に行ない、患者さんが納得された場合に、方向性を決め、スケジュールをたてていきます。ドクターも忙しいので、現実的には1回1回ていねいに話をすることは難しい状況にありますが、十分に話しあい、今後の可能性について説明を受けることが大切です。

 まだ非常に数は少ないのですが、体外受精、顕微受精のコーディネーターがいて、そういう人が説明をしている病院もあります。ほんとうは、カウンセラーのような方が病院にはひとりいて、いろいろ悩みや相談を聞いてくれるといいのですが。医療サイドは、からだだけでなく、心の面も同時にケアしていく準備を整えていく必要があると思ます。


人工受精

 精液を採取して、子宮にカテーテルをつかって戻す方法。精子は洗浄し、運動性のよい精子を回収し精液を濃縮させてから子宮に戻す。この精液を濃縮させる方法としてはパーコール法、スイムアップ法などがある。人工授精は外来で行なわれ、20分ほど安静にしてから帰宅できる。


体外受精

 精子と卵子を体外にとり出して受精させ、その受精卵を子宮に戻す方法。一般的には排卵誘発剤で卵巣を刺激しなるべくたくさんの卵子を採卵し、受精させ、3日ほど体外培養し状態の良い受精卵(胚)を2〜3個子宮に戻す。費用は病院によって異るが、だいたい30〜50万円程度。


顕微受精

 顕微鏡下で精子と卵子を受精させる方法。一般的には細いガラス針を用い、精子を直接卵子に注入する卵細胞質内精子注入法が主流。受精卵はやはり3日ほど培養し子宮に戻す。費用は体外受精と比べ10万円ほど多くかかる。


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