(文:小野田レイ・掲載:2014年3月)
●●● 初めて作る離乳食は、果汁ではなく根菜から
離乳準備のための果汁や白湯を与えないことは説明しました。では、生後6か月以降、何からあげればよいのでしょうか。一般的には十倍粥から始めますが、私の経験上、8割の赤ちゃんはお粥を食べません。
ご飯などデンプンは、唾液中の消化酵素アミラーゼにより、デキストリンやマルトース(麦芽糖)に分解され、甘味や旨味として伝わり、ヒトはおいしいと感じます。つまりよく噛むことにより味を感じるわけです。そのため、十倍粥では噛む作業が少ないので、唾液と混ざらずおいしさを感じないため食べないのだと思われます。
前述のように、赤ちゃんは生後3か月には甘味、酸味、塩味、苦味、旨味の5つすべての基本味を感じ取れるのですから、離乳食開始の時期には赤ちゃんがおいしいと感じるような工夫を施すことが大切です。工夫と言っても簡単です。
先ずは野菜からあげてみましょう。野菜はそれ自体に旨味や甘味など基本味があり、お粥よりも味がします。野菜といってもいろいろありますが、ほうれん草やキャベツなど葉菜類は喉に張り付きやすく、離乳食には向いていません。また、ジャガイモやサツマイモなどホクホクするものは口の中でざらつき感があり、喉につかえるのか、嫌がる赤ちゃんが多いようです。よく、お粥と同時にジャガイモのスープを離乳食初期に勧めますが、いろいろなお母さん方の話しを聞くと、どちらも食べない赤ちゃんが多く、お母さんは困惑するようです。
ツルツル系野菜は、赤ちゃん好み
赤ちゃんは、表面がツルツルとした舌触りや喉ごしのよい物を好みます。野菜でいう舌触りのよい物とは、ニンジンやカブ、大根などです。ニンジンやカブなどツルツル系の野菜でも、すりこぎなどで粉砕してしまうと、ざらつき感が出てしまいます。
生後6か月にもなると、顎も発達して舌と上顎で押しつぶせるようになります。つまり流動食でなければいけないということはありません。ニンジンやカブを薄くくし切りにして昆布出汁で煮て、煮くずれする手前くらいの柔らかさにします。手でつぶすとつぶれるくらいにすれば、口に入れても誤嚥や喉につっかえることなく、赤ちゃんは自分の上顎と舌でつぶしながら食べることができます。味蕾は舌と上顎に分布してますので、このつぶす行為で唾液と混ざり、基本味と香りを捉えおいしいと感じることができます。日本母乳の会でも離乳食の硬さはお母さんの乳首の硬さからと勧めています。
また、「離乳食は薄味で」というフレーズが一人歩きして、いつの間にか「味をつけないで」というふうになり、無味で調理するお母さんが多く見られますが、これも赤ちゃんが食べない原因の一つです。昆布出汁で煮て、塩をひとつまみ入れて味を整えると、見ちがえるほど食べるようになります。甘味は野菜そのものから出るので、砂糖は入れなくてよいですが、旨味と塩味は付けてあげましょう。
赤ちゃんが食べることに興味が出て「ちょうだい」と手を出したら、その手にくし切りにして柔らかく煮た、ツルツル系の野菜を渡してみてください。赤ちゃんは誰に教えられたわけでもなく上手に咀嚼し、おいしそうに食べてくれることでしょう。
Point レッスン2のポイント
1.離乳準備のための白湯は与えない。
2.わが子のペースに合わせて離乳を進めよう。人と比べない。
3.初めて作る離乳食は根菜から始めよう。
4.赤ちゃんは「おいしい」を知っている。
5.薄味を付ける。
きほんのレシピ帳
ニンジンと玉ネギの煮物
はじめての野菜は、ツルツル系野菜の煮物から。