おいしい音、温もりが伝わってきて、
物語の女の子のように冒険に出たくなる
チリとチリリ、ふたりそれぞれの自転車に乗って、春の森の中を気ままにどこまでも進んでいく。たどり着いた「森の喫茶店」の中には、いろんな大きさ・いろんな形をした木のテーブルと椅子があり、好きなものを選んで座れる。「私ならどこに座ろうかな…」とか、「どのテーブルに、どんなお客さんが座るんだろ…」なんて想像しながら読んでいると、なかなか次に進めない。
色鉛筆で描いたあたたかな色彩は、いろんなものを風にのせて運んでくる。森の喫茶店の木の香りとれんげティーの香り、森に咲く花の香り、サンドイッチ屋さんの焼きたてパンや、つくりたてのジャムの香り。そして、森の動物たちが奏でる音楽も…。
やわらかい色鉛筆画の世界にひたった後は、大切な人と一緒に、あてもなく、自転車に乗って冒険に出かけてみたくなる。ただ、風を感じるためだけに。チリとチリリ、ふたりの女の子と同じように、わくわく期待に胸ふくらませて。
(文・森ひろえ)
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