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お産の民族学(日本)

お産の歴史

文/きくちさかえ 掲載:1996年 更新:1998年 1999年 2006年

 その昔、100年くらい前まで、フィンランドではサウナの中で出産が行われていた。
サウナは戸外にある木でできた小屋で、自宅とは別棟になっていた。昔は、暖房もなく、今のように衛生的な生活でもなかったため、当時としては、サウナの中は暖かく衛生的だったらしい。
 お産は、資格のない産婆が介助した。産婆は、お産を取り上げる仕事のほかに、お祈りをする仕事を併せもっていた。赤ちゃんがなかなか生まれない場合には、昔の装束に身を包んだ産婆がナイフを持ってサウナ小屋の回りを時計回りに7回、反対回りに7回回り、おまじないを唱えたという。
 フィンランドは、ムーミンが生まれた国。森と湖に囲まれた大地には、古くから精霊伝説が生きていて、森の精、サウナの精、お産の精がいたといわれている。そうした精霊たちへの信仰が、お産の場面でも見られた。



 マレーシア東部のマレー人の間では、助産婦のほかに産婆と、シャーマンがお産にかかわっている。この地では、出産は霊的な攻撃を受けやすいと考えられていて、産婆はそれから母子を守るための儀礼を行う役目をする。お産が長引くと、薬草茶を飲ませたり、ココナッツオイルでおなかをマッサージしたりする。さらに、難産の場合には、シャーマンが呼ばれる。
 赤ちゃんが生まれると、夫が竹べらでへその緒を切る。胎盤はきれいに洗い、半分に割ったココナッツに入れてやしの木の下に埋める。
 産後、母親は、からだを暖めなければならない。暖めた石をおなかにのせ、ベットの下に炉を入れてさらに暖める。さらに、悪い霊の侵入を避けるために、ナイフや先の尖った金属、かさの柄を呪物として置く。
(出産の文化人類学、松岡悦子著、海鳴社)



 産婆は霊能力をもち、助産と同時に治療師であることが多く、社会の中でも尊敬される地位にあるという。産婆は、主に死んだ産婆の霊と交信しながら、お産が近いことや正常かどうか、マッサージや薬の処方の仕方などを教わるという。
 赤ちゃんが生まれると、へその緒の先をろうそくで焼き、綿に油を浸してからだをふく。胎盤は焼いてその灰を埋め、へその緒は煎じて不妊の治療に使うこともある。
 産後、母親はからだを冷やしてはいけないので、頭にスカーフを巻き、セーターを着て、暗い部屋に寝る。産婆は、母親を薬草の入ったお風呂に入浴させたり、薬草でマッサージをしたりもする。
(出産の文化人類学、松岡悦子著、海鳴社)

文/きくちさかえ 掲載:1996年 更新:1999年

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