World report Brasil
ブラジルのお産状況
ブラジル:Part2 「ブラジルは子だくさん」
ブラジルは病院出産では90%以上が帝王切開という施設もある、帝王切開天国です。
とはいえ、ブラジルの病院で取材していて感じたのは、女性たちはおおよそお産が軽いということでした。妊娠中からからだを動かしていることと、まわりに子どもがたくさんいて、育児に対する不安がないというのも、その大きな要因でしょう。
しかし、私は女性がセクシーであるということも、お産が軽くて早い、ひとつの要素なのではないかと思うのですが。
私が取材した病院は、南米大陸の上のほう、赤道からほんの少し下がった大陸の西側。ブラジル、セアラ州のアラカチという小さな町です。
無事に生まれると、看護婦は母親の胸の上に赤ちゃんを乗せます。母親たちはなんのためらいもなく、赤ちゃんをすっぽりと腕の中に入れるのです。その抱き方がとても自然なので驚いてしまいました。
日本の分娩室で見ていると、生まれたばかりの赤ちゃんを「はい」と渡されたとき、どうやって抱いていいのか戸惑ってしまう母親がけっこういます。実際、生まれたばかりのヒトはぬめぬめしていて裸のままだとちょっと抱きにくいですし、おっことしてしまうんじゃないかと、不安にもなります。助産師に支えられてようやく腕の中に抱いても、赤ちゃんの顔を乳首までもっていく動作は学習したことのない未知の世界ですから、うまくできません。
17才の初産の女性のお産に立会ったのですが、産後「おっぱい吸わせてね」と看護婦に声にをかけられると、「そうね」とばかり乳首に赤ちゃんの口をもっていきました。それが無造作にできているのです。私が見ていた二十人ほどの産婦の中ではひとりだけ、乳首のくわえさせ方がわからずに看護婦に手伝ってもらっていた初産の女性がいましたが、それ以外の人はすべてすんなり。
ブラジルは子だくさん。そこら中に子どもや赤ちゃんが溢れているので、普段の生活の中で子どもや赤ちゃんに触れる機会が多かったり、授乳している人を身近に見ているからなのかもしれません。
さらに、生まれてきた赤ちゃんのガッツキ指数も日本より高いような気がしました。乳首のそばに近づくと、あら不思議、首を傾けておっぱいを探す仕種をして、このときすでに口をパクパクさせています。
哺乳類の赤ん坊とはいえ、人間の場合は生まれてすぐに乳首にうまく吸いつける赤ちゃんばかりではありません。なにしろ生まれてはじめての行為だし、母親も慣れていなければなおさらです。授乳はふたりがダンスをするように、手に手をとって練習するものと言われているくらいですから、うまく吸えるようになるまでにはけっこう時間がかかるもの。
すんなりパクっと乳首に吸いついているブラジルの赤ちゃんたちを見ていると、生まれた瞬間からなんて生きることに積極的なんだろうと、ほれぼれしてしまうのです。
2003年 7月 きくちさかえ記