●特別養子制度
・子どもの養育を目的とした養子制度
・子どもにやむを得ない事情(実親が行方不明など)があるとき
(=実親よりも養親が養育した方が児童の福祉のために有益であるとき)
にのみ認められる
・原則として6歳未満の低年齢児が養子となり、
養親は必ず夫婦でなければならない。
・実親と養子との法的関係は終了し、
養親と養子という1組の親子のみが法的に存在する。
・原則として養親から離縁が認められない。
・養子は戸籍上実子と同様の記載がなされる。
・原則として6ヶ月以上の試験養育が勧められている
●普通養子制度
・養子の年齢および養親の年齢に制限はない。
・単身者も養親になることができる。
・子どもが未成年子の場合、養子縁組により親権が実親から養親に移るが、
養子と実親の相続や扶養など法的な関係はそのまま存続する。
・戸籍に養子であることが明記される。
特別養子制度の要件は厳しいため、特別養子が家庭裁判所で認められない場合、再度、普通養子を検討するケースもあります。
現在、児童相談所や民間の斡旋団体で勧められる養子縁組は主に特別養子制度なので、以降では特に断りのない限り、特別養子制度について説明します。
(2)運用
子どもを斡旋してもらう方法には次の3通りがあります。
1.児童相談所
2.民間の斡旋団体
3.個人(産婦人科、弁護士など)
養子縁組件数全体の中で、最も多いケースは児童相談所の斡旋を経るケースです。実際に特別養子縁組における養親と養子の関係を統計で見てみると、養親は養子縁組前に里親だったケースがほとんどを占めることから(図2)、児童相談所の斡旋を受ける場合に必要な手続きを説明します。
児童相談所を通して養子の紹介を希望する場合、児童相談所で里親の登録をする必要があります。里親制度は児童福祉法で規定され、民法で規定されている養子制度とは全く別の制度ですが、運用面では2つの制度がオーバーラップしています。児童相談所で里親登録をし、里親として子どもを養育すると、その養育期間が、特別養子制度で求められている試験養育期間として認められます。児童相談所の指導と援助を受けた後、家庭裁判所に子どもとの養子縁組を申し立て、認容の審判がおりれば養子縁組が成立します。つまり、養子縁組成立までには、1.児童相談所、2.家庭裁判所という2つの機関が関与することになります。また、児童相談所の代わりに、NPOや社団法人のような民間団体が関与する場合もあります。
図2 養子になる者と養親の関係
出所:司法統計各年度より筆者作成
では、どのような条件が斡旋団体で養親候補者に求められているのでしょうか。児童相談所が要求する細かい規定は地域の児童相談所に問い合わせる必要があります。ここでは、民間団体の規定をみると、以下の通りになります。
●NPO法人環の会の育て親(養親)の条件
・子ども(乳児・幼児)の抱えるさまざまな事情を理解していただける、ご夫婦。
・子ども(乳児・幼児)を法律上、実の子どもとして迎えていただける、
ご夫婦(特別養子縁組の手続きを取ることが条件)。
・仲の良い、ご夫婦。
・ご夫婦共に、年齢は39歳以下。
・ご夫婦どちらかが専業主婦(主夫)または専業主婦(主夫)になり得る、ご夫婦。
●財団法人家庭養護促進協会の養親の条件
・結婚後3年以上経過していること
・子どもとの年齢差が40才までであること
・年収が300万円以上あること
・部屋の間取りが最低2間以上あること
・引き取った当初(6ヶ月〜1年間)、母親が育児にかかりっきりになれること
これらの条件を厳しいとみるか、緩いとみるかは人によって評価がわかれるところでしょう。児童相談所は各相談所によって、養親(里親)に求める条件が異なることが考えられるため、細かい条件は各児童相談所にお問い合わせ下さい。
●養子縁組関連のサイト
東京都福祉保健局HP (東京都里親認定基準)
書籍の紹介
『家族づくり 縁組家族の手記』
絆の会編、1997、世織書房
『親子になる 養子縁組の選択』
絆の会編、2007、御茶ノ水書房
『里親が知っておきたい36の知識』
社団法人家庭養護促進協会、2004、家庭養護促進協会神戸事務所