私の出産体験記

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助産師の出産体験記
〜in U.S.A.(メリーランド州)〜

sj0080さん(掲載:1999年)


はじめての土地、なれない英語での出産施設探し

トラブル発生、妊婦のあせる気持ち

陣痛との闘い、自然分娩か、麻酔分娩か

大きな拍手、男の子誕生!



はじめての土地、なれない英語での出産施設探し

 私が諸事情でアメリカに来たのは、妊娠34週の時。まだ春には少し遠く、大雪の歓迎を受けてしまう季節でした。妊娠末期の引越のせいか、体調は最悪、体は痛いし、むくんで重いし、おまけに逆子。自分が助産婦なのをいいことに、無茶をしてきました。日本から、現地の産婦人科の予約をしておいた方がいい・・・と、先任の方のアドバイスを頂いてはいましたが、「日本人はみんなそこに通っている」というふれこみが気に入らず、また自然分娩、出来れば家で産みたいと思っていたので、病院を決めれずにいたのでした。日本から、インターネットで施設探し&コンタクトをとったのですが、慣れない英語や、習慣のせいか、どうもハッキリと連絡が取れす、大変不安でした。

 アメリカに着いてからは、まず、生活をするための様々なセッティング(諸手続、家財道具をそろえるなど)が優先していましたから、私の出産を考える余裕が出来たのは、36週近くになってしまいました。出張してくれる助産婦とは、いくら連絡を取っても、上手くつながらず、また、助産院のようなバースセンターも病院並みの費用がかかってしまうこと(産後2日の入院で、日本で一週間個室に入れるのでは?)もあり、ここでまた悩んでしまいました。そんなことをしているうちに自然に逆子が治ったのは幸いです。

 数日後、夫を迎えてくれた関係者の計らいで病院をすすめて貰いました。メディカルセンターでありながら、自然に産むこともできるということで、早速受診。(無理して予約を入れてくれたようです。)National Naval Madical Center(以後NNMC)という、大きな病院です。ここでは、異常がなければ、ドクターでなく、助産婦の外来を受けることも可能でしたので、「カイザーさん」の外来にかかりました。妊婦健診項目は、日本とほぼ同じ。腹囲がないのと、体重がポンドだったのは違いますね。予防的に張り止めを飲んでいたので、念のためドクターの内診、頭位を確かめるため、携帯用エコーでの診察を受けましたが、問題なしなので、このまま助産婦外来にかかって良いことに。カイザーさんは私のお産の希望(自然で産みたい、産後早く退院したいなど)を聞くと、バースプランを立てて来ることを提案してくれました。アメリカの助産婦は、日本と違い、注意するという感じはなく、すべてを受け入れて援助してくれそうな頼もしい感じに移りました。

 早速後日、バースプランを立てて持っていきました。英語はほとんど出来ないので、夫に訳して貰ったり、インターネットのバースプランを立てるページを参考にしました。それを見ながら、お産の細かいところもじっくりと説明してくれましたので、私としては、もう、出産施設に迷いはなくなっていました。アメリカの助産婦は、正常妊婦の健診一般、正常出産、産後健診をやっています。それにまつわる技術、内診、細胞診、会陰切開&縫合・・・など、日本の助産婦より、扱う範囲が広いです。しかし、少しの異常でも、発見したときは、ドクターと連携をとるので、お互い信頼しあっているというのがわかりました。(少し日本でも見習いたいなという感想を持ちました。)


トラブル発生、妊婦のあせる気持ち

 さて予定日を過ぎた頃、カイザーさんが突然、お産に立ち会えないというのです。どうも、彼女のMedical Shcool受験にぶつかってしまうようなのです。そこで、その間、サグスさんという助産婦さんが担当になりました。サグスさんは妊娠中です!でも、同じように自然分娩に理解を示してくれました(アメリカは麻酔分娩が非常に多ので、自然分娩に興味があるということでした)。私はこの頃は、かなりお産を楽観的に感じていました。不思議なくらい、うまくいくことしか、考えられなかったのです。ところが、私より2週間遅い予定日の友人が出産したという知らせを聞いたときから、急にお産がうまくいかないような気がしてならなくなったのでした。そして、その予感は的中とまではいかないまでも、影響を残していたようです・・・

 サグスさんのはじめての外来の日、夜から、不規則な張りがあったので、内診して貰いました(希望がなければしないそうです)。今考えるとどうしてあんなに焦っていたのか、わかりませんが、私はもう、産みたくてしょうがない気持ちになっていました。そうして、夜からの不規則な張りもあることだし、卵膜剥離をしたら、少しは変わるんでは?と思い、やって貰ったところ、破水をしてしまいました。サグスさんは「Congratulation!」と、入院の手続きを。さて、私は破水したので、あ、陣痛が来るぞ!!とはりきってご飯を食べに行きました。(妊娠中我慢していたピザをお腹いっぱい食べたのでした)それがいいのか悪いのか、少し陣痛が来るようになりました。


陣痛との闘い、自然分娩か、麻酔分娩か

産褥室

 入院してすぐ入った部屋はLDRで、木目調のきれいな部屋。病院というよりはホテルです。それだけで、気分が明るくなってくるのだから不思議です。やはり、アメニティーは重要ですね。まず、破水しているので、モニターをつけました。そういうときは張りがたいしたことないので、歯がゆく感じました。とりあえず、夫は荷物をとりに、私は散歩をすることにしました。院内はとても広いので、いい運動に。しかし、陣痛はついてきません。五分間隔に軽く張るといったところから進まないのです。何度か散歩に行った後、疲れてウトウト眠ってしまいました。

 サグスさんから、促進剤の説明を受けましたが、もう少し頑張ってみたいので・・・ということを受け入れて貰いました。彼女はいったん家で待機するということに。気がつくと、もう夜の10時。破水してから、ずいぶんたっていました。陣痛は、5〜10分間隔、痛くなってきましたが、こんな張りじゃ、全く進んでないだろうということは、さすがにわかりました。とにかく、体が疲労しないように休みながら・・・とリラックスを心がけていたのですが、いつの間にか、体が痛みに捕まってしまうように。大した張りじゃないのは、お腹を触ってわかりました。でも、それ以外に別の力が、骨盤を割ろうとするかのように私を襲います。その頃、隣に大声で入院してきた方の声が聞こえました。(どうも早く麻酔をして〜!と叫んでいるそうです)しばらくすると、聞こえなくなり、「ああ。麻酔して貰ったんだな。」と羨ましく思いました。

 私の陣痛は相変わらず、お腹は張らないのに、骨盤だけがぎりぎりと痛んで、かなり辛くなっていました。思わず、声が漏れてしまいます。でも進んでないと思いました。「もうだめだ・・・」もう絶望感でいっぱいになった頃、隣から産声が聞こえてきました。「隣の悲鳴の人、生まれね・・・」と夫と力無く笑ってみたモノの、陣痛が来るともう余裕がありません。分娩開始からもう12時間、あと何時間経っても、このままじゃ生まれないと思いました。夫に「看護婦さんにエピドラ(硬膜外麻酔)をしてくれるよう、頼んで欲しい」といいました。夫は、「自然で頑張らないとあとで後悔するから、頑張るといっていたではないか」と励ましてくれるのですが、私は骨盤を襲う別の痛みから逃げることしか考えられなくなっていました。「とにかくお願い!」と悲鳴に近くなった私を見て、夫は、看護婦さんに依頼してくれました。

 エピドラを使用するためには、まず点滴をしなくてはならないと言うことで、私はこれから先、1時間も陣痛に耐えなければならないことで、更に意欲がなくなります。アメリカでは、麻酔科看護婦がいて、エピドラも看護婦が入れます。不思議なモノで、麻酔をして、ホンの一息つくと、あの痛みは全く感じないようになりました。すると陣痛もいつの間にか2〜3分おきになってきています。緊張しすぎて陣痛が来なかったのではということでした。内診してみるとまだ5センチ。進んでないというカンは当たったようです。痛みがなくなったところでウトウト仕掛けましたが、今度は息苦しさを感じます。どうも血圧が下がったようで、コレはすぐ薬で治りました。

吸引
 疲れてウトウトしていたので、どの位時間がたったのかわかりませんが、今度は寒気に襲われました。少し前から軽く発熱していたようですが、38度を超えたようです。(華氏なので、体温を測られても熱があるのかわからなかった)抗生剤を投与される事になりました。
ボーっとしていながら、「ああ、アメリカまで来て、いろんな事が起こるなあ・・・」と考えていたとき、とたんに心音が遅くなりました。モニターは見なくても、相当遅いことは、助産婦時代のカンが教えてくれます。すぐ、酸素投与、体位変換。でも心音がなかなか戻らず、心の中では大パニックに!結局2〜3分で回復しましたが、もう促進したらどうかというすすめにはうなずくしかありませんでした。内診しても全く変わってなかったからです。焦って卵膜剥離をしなければ、こんな事にはならなかったかな・・・と思いながらも後戻りも出来ないのです。

 気をしっかり持って、「元気な赤ちゃんを産むことを優先しよう。」と心に決めました。夫にも、「もう、自分では判断しきれないので、フォローをよろしく」と伝えました。促進剤の点滴が追加されました。かすかにお腹の張りは感じるモノの、モニターを見ていても、そんなに強くはないようです。そんな中、何度か心音が下がり、もう、自然どころか、下からも産めないかもしれないと思いました。そうして、自然にこだわって、早く処置を受けなかった自分を恨む気持ちが出てきました。自然にこだわりすぎて、大切な赤ちゃんを苦しめてしまっているのでは・・・悲しい気持ちでした。数日前からのイヤな予感はコレだったのか。夫はいろいろ慰めてくれたり、励ましてくれましたが、私の気持ちは晴れませんでした。サグスさんは朝の5時から待機してくれてました。時間外なのに、ついてくれていたのです。


大きな拍手、男の子誕生!

 朝の8時になった頃、また心音が大きく下がりました。私は、今度こそ帝王切開だ!と思いましたが、子宮口が全開して、下がりだしてきたというのです。そこで、いきみを始めることにしました。麻酔をしているので、感覚はわずかしかありませんが、骨盤誘導線を思い描きながらいきみました。サグスさんは私の体を左右側臥位にしながら(自分では動けないので、支えて貰いました)いきみを誘導しています。あとで聞いたのですが、麻酔をしていても、こうやって左右に体位交換すると進みがいいそうです。知らないうちに、部屋には産科医、小児科医、看護婦・・・とギャラリーが沢山!予定では助産婦だけのはずでしたが、心音が落ちたりしたので仕方ないです。でもみんな応援してくれています。そのうち撥露になったとき、頭に触らせて貰いました。確かに、頭らしき硬いモノが降りてきています。不思議な感覚でした。そうして頭が出たとき、大勢のみなさんは拍手してくれました。

 その後、自分がどうしたかは、よく覚えていません。ビデオで見ると、すぐ赤ちゃんを見ていました。「オゲ」と弱い声をあげていますが、手足は動かして、ぐったりはしていません。予定通り男の子です。生まれた赤ちゃんは羊水混濁で、すぐ小児科医が吸引していました。あまり激しい泣き声は聞こえなかったのですが、とりあえず、泣いています。良かった・・・感染の疑いありということで、すぐ点滴といわれましたが、その前に抱っこさせてもらえました。「こんにちわ。よろしくね。」とすぐオッパイを含ませたのですが、上手く飲んでくれません。私は生まれてすぐ飲ませるは自信があったのですが、苦しそうな顔をして飲んでくれない我が子を見て、ひどく苦しい思いをさせてしまったことを後悔するような気持ちになりました。でも、生まれた赤ちゃんは元気なので、点滴をヘパロックして母子同室にしてくれることになりました。こんな事日本じゃないナアと思いながらも、生後四時間で遅ればせながら母子同室になれました。一日二回抗生剤の点滴をするが、それ以外は母子同室でよいし、母乳オンリーでよいとのこと。初めはなかなか飲んでくれなく、不安になりましたが、生後12時間ぐらいたってから、上手に飲んでくれるようになりました。もちろんオッパイは滲むぐらいですので、その夜はほとんどすわれっぱなしでしたので、添い寝で抱いて寝るという幸せな経験が出来ました。この病院は家族はずっと泊まってもいいので、入院中、夫も同室でした。(笑)

 次の日は割礼を済ませ、少し活気も出てきたので、私も少し元気になりました。そして、次の日、検診の結果がいいから退院だ!と朝の七時に(日曜ですよ)ドクターにいわれ、すぐ退院指導(カルテのコピーをくれる)記念撮影とあわただしい午前中を過ごして無事退院。はじめてのカーシートは埋もれてしまっているようで、ちょっと怖かったですが、無事帰宅。手伝いのない私たちは、そのまま普通の生活になりました。

 自然では産めなかったことは「痛みがあってのお産・母親」のようなことはいわれますし、気持ちにいろいろ後悔が残らないといえば嘘になりますが、育児の中で、癒していくしかないだろうなと思っています。赤ちゃんは元気だし、オッパイだけで、すくすく成長しているので、コレで良かったんだと思います。
(1999.7.13)


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安産と楽しいマタニティライフに役立つ101用語を解説。 監修/医学博士・産婦人科医師(故)進 純郎先生(監修当時)葛飾赤十字産院院長





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