出生前検査について
今回は出生前検査についてお話しますが、これについて考えることはいのちについて考えることですから、大変難しい問題を含んでいると言えます。出生前検査を受ける場合には、そうしたことを踏まえた上で、ご夫婦で出生前検査についてよく話し合い、考えていただきたいと思います。
羊水検査
羊水検査はおなかに針を刺し、羊水を採取して、そこに含まれる細胞を調べて、胎児の染色体異常を調べる検査です。これを羊水穿刺(せんし)と言います。費用は保険適用ではないので10万円ほどかかります。
羊水穿刺による検査は、妊娠15〜17週に行ないます。あまり時期が早過ぎても、情報が得られません。おなかの表面から長い針を刺しますが、あらじめ麻酔を施しますから、ほとんど痛みはありません。
超音波で胎盤の位置を確認しながら、適確な場所に針を刺します。難しい操作ではありませんが、流産や感染症を引き起こす可能性も0.3%ほどあると言われています。けれど、専門に行なっている病院であればほとんど心配はないと言っていいでしょう。葛飾日赤産院では、羊水穿刺が終わったあとにおなかが張りそうな場合には、張り止めの薬を処方しています。この検査による入院の必要はほとんどの場合ありません。
トリプルマーカー検査
トリプルマーカーとは、血液検査によって行なうものです。採血して検査に回し、血液中の成分を測定して、その値から赤ちゃんの染色体異常の可能性の確率を予測します。簡単に行うことができる検査ですが、ここで予測できるものは、おもにダウン症候群と18トリソミーなどで、すべての染色体異常がわかるわけではありません。
費用は3万円ほど。検査結果はすぐに出ますが、高い確率が出た場合には、その後再検査が必要になります。羊水検査は結果が出るまでに時間がかかり、最終的に21週までに結論を出す必要がありますので、トリプルマーカー検査は妊娠15〜17週までに行なう必要があります。
トリプルマーカー検査の結果は、予測確率が提示されます。たとえば1000分の1の確率とか100分の1の確率で、ダウン症候群の可能性があるというぐあいです。しかし、どれくらいの確率であれば安心かというデータはないために、結果がはっきりしないこともあり、検査の信頼性が疑問視される声もあります。また再度、羊水検査を行なうことになれば、さらに費用も日数もかかってしまうことになります。そうした意味で葛飾日赤産院では、トリプルマーカー検査は行なわず、必要な場合には直接羊水検査をするようにしています。
胎児採血取法(齊帯穿刺)
このほか特別な理由で、胎児のへその緒の採血によって検査を行なう場合があります。羊水検査と同じように、おなかから針を刺して、さらにへその緒から採血します。
これは高度な技術を要しますし、その目的、必要性、また危険性などについても医療者と十分な話し合いをもった上で行なわれる必要があります。