よるくま
まついのりこ/作 偕成社 ¥1,080-
夜、夢の世界へ冒険にでかけようとする時は、
できることなら、怒ったりせかしたりせずに、
心地よく眠らせてあげたいもの。
この男の子は、お母さんに、とってもとっても話したいことがあったのだ。
夜中にドアをたたいて訪ねてきた小さなくまのこ・よるくま。
男の子が語るよるくまとの物語の中に、
とっても、おかあさんに伝えたかったことが。
私が精神的にとても弱り、不眠症になっていた時期、
息子は毎日夜中に目を覚ますと、私を探して歩き回り、
見つけるとホッとした顔をして、また私の足もとで
猫のように丸くなって眠っていた。
「あのね、おかあさんを さがしにきたの。
めが さめたら おかあさんが いなかったって。」
男の子のことばを読んだとき、
私はあの頃4〜5歳だった息子の心の痛みを思った。
子どもの頃、山で出会ったおしゃべりする生きもののことを、
友達に話して聞かせていたことがある。
作り話なのに、何度も話しているうちに、
ほんとにその生きものが裏庭に
ひっそりと生きているような気がしたことを思い出す。
絵本の中の主人公。お話の中のお気に入り。
何かに傷ついた子どもは、物語の世界に浸り、
そこで思いきり心を遊ばせることで、少しずつ元気になっていく。
いなくなったお母さんをさがしに夜の冒険へでかける
・・・「よるくま」
いっぱい叱られたからサンタさん来るかなあ
・・・「よるくま クリスマスのまえのよる」
どちらも夢の扉を開けてくれるような、おやすみ前のおはなし。
(文;森 ひろえ)