ぽとんぽとんはなんのおと
神沢利子/作 平山栄三/絵 福音館書店 ¥972-
何を見てもぼーっとしてただけの赤ん坊が、時に、はっとする表情をしたり、1歳くらいには、人さし指で
「ん?」と聞いてくるようになる。
私は子どもの心の中に、どんな疑問が渦巻いているんだろうと、いつもワクワクしていた。
「今日は、どうしていつも今日なの?
いつになったら明日になるの?
いつまででも冬なの?」
息子はこのごろ毎日のように私にこんなことをたずねてくる。
ふゆごもりの穴の中。生まれたばかりのふたごのこぐまとかあさん。
しずかなほら穴に、時折外の気配が届いてくる。
こぐまは、閉じていた目を半分あけて、たずねるのだ。「ほっほー ほっほーって なんのおと?」どんな質問にも母さんは、目を閉じたまま、子どもにわかるように答えつづける。
「ふくろうのこえでしょう。くらいよるにふくろうは、ねないでえさをさがしているの。おうちにいたら、こわくはないの」そして、「さあ、ふたりとも、かあさんにだっこであさまでおやすみよ」
ようやく春風のにおいがほら穴まで届き、こぐまたちはかあさんに連れられて、生まれて初めて明るい外の世界を知るのだ。
泉の水のように次々と湧いてくる「あれはなに?」の答えをひとつひとつ受けとめて、子どもは答えてくれる人の愛情を感じながら大人になっていく。
(文;森 ひろえ)