おみせやさん
角野栄子/文 田端靖一/絵 童心社
「いらまっしぇ。何ほちいでちか!?」
家では、日に何度も、息子のこんな言葉を耳にする。
ちゃぶ台の下やお風呂のお湯の中から、想像の車やジュースやお菓子が現われ、
それが、なぜかわからないけど、何から何まで108円で売買される。
家のおはじきは、すべて108円通貨となってしまった。
108円で仕入れた自転車も、108円で売ってしまう。実に気のいい商売だ。
昨日も今日も雨。ずっーと雨。
でもこういうとき、ぼくはおまじないをするんだよ。
みぎてとひだりてと あくしゅして、そらにむかっていうんだよ。
「なにかな なにか たのしい なにか」
するとね、たちまちいいことかんがえちゃうの。
そう、きょうはおみせやさんするんだ。
そして、床に広げたおみせやさんに、次々とかわいいおきゃくさんがやってくる。
雨の日を受け入れるか、そうでないかで、遊ぶ意気込みも違ってくる。
天気のいい日に外で遊ぶのも、テレビゲーム類もいいけれど、
ちょっとした思いつきで広がる家の中での遊びは、子どもを夢中にさせてくれる。
新聞やぶりでも、ダンボールハウスでも、おみせやさんごっこでも、
「今日も雨だ。よかったよかった。」と思える位、楽しんでしまおうよ。
いつか、嫌になるほど晴れが続く時期がやってくるのだから。
「おかあちゃん、はい、これおつり。ひゃくはちえん。」
…子どもはいつでも到って真剣だ。
(文;森 ひろえ)