おはようのほん
マーガレット・ワイズ・ブラウン/作 ジャン・シャロー/絵 谷川俊太郎/訳 童話館出版
早く目覚めてしまった朝は、神様からのプレゼントだ。
詩をながめ、空想にふけり、鳥のさえずりが聞こえる庭に出る。
・・せっかくのプレゼント・・・家事をすることはない(笑)
毎朝生まれる新しい芽生え。見なれないクモの巣。歩き始める虫たち。
朝の庭は、日常と程遠い、私だけの空間だ。
やがて隣人たちの動き出す音。
お日さまが輝く頃に、ようやく食事の仕度を思い出し、
そろそろ・・・と、私の姿を探しに走る子どもの足音に耳をすます。
「今日はどこ行くの? 何して遊ぶの?」
息子が幼稚園に行くようになり、
朝、いつものセリフを聞くことはなくなった。
おきるのよ こどもたち!
いちにちが はじまりますよ!
きょうは なにをかんがえる?
きょうは なにをしてあそぶ?
おきるのよ みんな!
きょうは あなたのもの。
今まで、息子の時間は
私の時間の一部のような気がしてた。
幼稚園へ行きだしたばかりの彼はまだ、
友だちと遊ぶ時間と、母と遊ぶ時間との間を
行ったり来たりしているようだ。
一緒にいてもいなくても、キミがつくる今日。
これは、キミだけの時間をつくるはじめの一歩。
そして、私だけの時間も少し取り戻そう・・・
なんて思いながら、毎朝私は幼稚園の門の前で、
そっと息子の背中を押す。
(文;森 ひろえ)