ねぇ だっこ
いちかわけいこ/作 つるたようこ/画 佼成出版社 ¥1,404-
息子がまだ1歳の時のこと。
保育園に迎えに行き、声をかけようとすると・・・
担任のふー先生に手を差しのべ、「ん、ん、」とくり返している息子。
「なーに? だっこ? だっこしてほしいの?」
「ん、」
「じゃあ、だっこって言って。言えるー? だっこは?」
「・・・・で、でっこ」
大好きなふー先生に「はーい」と笑顔でだっこされた息子の嬉しそうな様子。
そして私の姿を見つけると、今度は私の方に手をのばし、
「でえ—っこ」
なるほど、子どもの言葉や心は、こうして引きだすことができるんだ。
いつも弟をだっこしているおかあさんに、
おねえちゃんはなかなか「わたしもだっこして」って言えないの。
弟が寝てしまってから、おねえちゃんはお手伝いをしながら、
「おさるのだっこって、どんなふう?」と聞いてみる。
ねこは? ペンギンは? ぞうは? きりんは? くじらは?
「こんなふう」と答えるおかあさんに、
あったかいだっこポーズの動物たち。
「あのね、あのね、おかあさんのだっこは どんなふう?」
やっと言えたね、おねえちゃん。
なつかしい色調の版画から、子育て期のあったかい時間が伝わってくる。
いつもだっこしてるわけにはいかないんだけど、
大人だって、ホントはだっこが大好きなんだよ。
(文;森 ひろえ)