モミの手紙
ロバート・フロスト/作 テッド・ランド/絵 みらいなな/訳 童話屋 ¥1,620-
子どもの頃住んでいた小さな家。
そこにあった数本の松の木が、ある日突然全部切り倒されていたのを見た。
小学生だった私は泣いて家に帰り、母にそのことを告げると、「あの家はもう、うちのものじゃないから、どうすることもできない」と。
聞けば、私の遊び場でもあったどの畑も、どの山も、みんな誰かの所有する土地だということがわかり、私は首を傾げた。
あの木も、あの美しい木も、みんな誰かのものだなんて。
木の価値。土地の価値。人の価値までも、お金に換算されることに慣れてしまったのは、一体いつからだったんだろう。
欲しいのはクリスマスツリ−、と男は言った。
たまげたことに、私の山のモミの木は、
商人の目にはクリスマスツリ−と映るらしい。
町からクリスマスツリ−を買い付けに来た商人。
一緒に山を案内しながら、言葉少なに追い返してしまう男。
最初から売るつもりなどなかったのだ。
どれもみな美しく、神々しい姿の木に値段をつけることの愚かさを一番知っているのは、きっと子どもたちだ。
そんな気持ちを忘れないままの大人でいたい。
・・・この絵本がそう思わせてくれた。
(文;森 ひろえ)