みんなびっくり
長新太/作 こぐま社 ¥1,620-
きっと子どもに遊ばれたんだろうなあ。
道ですれちがったマジメ顔なお父さんの顔に、キャラクタ-の小さいシ-ルが貼られてるのを見たことがある。その人とシ-ルのギャップに感心して、
つい「もしもし」と声をかけそびれてしまった。ま、いいか。気付くのが遅い程、子どもも喜ぶ。「そのまま行けよ。どこまでも。」
私は黙って見送った。
ぞうのしっぽを長い鼻にみたてて、
おしりに落書きしたいたずらこざる。
前から見ても後ろから見ても、ぞうの顔。
昼寝してた時に書かれたので、
ぞうは、どうして動物たちが自分をこわがるのかわからない。動物たちも、教えてやりゃあいいのに、誰も教えないの。私とおんなじ。
さみしくなったぞうが、池に自分の顔をうつしてみるところで、悪いけど、私は笑いが止まらなくなる。
いつものことなので、息子は私が笑い終わるまで待っている。
おしりの絵を落としたぞうのまわりに、安心した動物たちが集まってきた。嬉しくて、笑いながら涙を流すぞう。
いつものように、その真似をしながら、動物を指差し確認する息子。
息子が始めて覚えた絵本作家の名前が「長新太」。新しい本を手にとるたびに、「誰作? チョ-シンタ作?」と聞きまくる時期はもうすぎたけど。
「その本は違うよ」と聞いてがっかりする息子の表情に、私は「チョ-シンタ」の威力を改めて思い知ったのだ。
(文;森 ひろえ)