ゆかいなかえる
ジュリエット・キープス/作 いしいももこ/訳 福音館書店 ¥1,080-
子どもが初めて見る世の中は、「?」と「!」で満ちている。
いのちは、たまごから生まれてくるということ。
おたまじゃくしが、かえるに変身するということ。
いつも田んぼや川にいるきれいな白い鳥(サギ)が、
大好きなかえるを食べるということ。
そして、冬がくれば、あたたかい土の中で眠るらしい・・・ってこと。
初めて池の中のかえるのたまごを、ぐしゃっ・・・とした時、手のひらにおたまじゃくしをのせた時の感触は、大人になった今でも、私の手のひらが覚えている。
見開きページいっぱいに描かれたおたまじくしが、ゆかいにしっぽをふりながら笑ってる。それを見ただけで、子どもたちから歓声があがるんだ。
たまごからかえった4匹のかえる。競争したり、サギや亀から身を隠したり。
ゆかいに水をかき、跳んで笑って遊ぶ様子は、生きてることが楽しくてしかたがないみたい。まるで子どもの姿、そのままだ。
青・白・黒・緑。4っつの落ちついた色調で描かれているからこそ、かえるたちの表情が生きている。
春は、眠っていたものたちが目を覚ます季節。
散歩のたびに、土の中のかえるに話しかけている息子に、あの手のひらの感触を味わわせてやりたいものだと、秘かに企んでいる私だ。
(文;森 ひろえ)