いのちは見えるよ
及川和男/作 長野ヒデ子/絵 岩崎書店 ¥1,404-
エリちゃんの隣りに住んでいるのは、盲学校の先生で、目の見えないルミさん。
ルミさんの陣痛が始まったのに気付き、救急車を呼んで、病院でもずっとつきそって
いたのは、小学生のエリちゃんだ。長い陣痛の痛みを乗り越えて、やっと生まれた赤
ちゃんのしわくちゃな顔。
赤ちゃんを抱きしめてワーワー泣くルミさんの顔。赤ちゃんの世話をする助産婦さんの話を聞くエリちゃん。これ以上、いのちの大切さを感じる瞬間ってあるんだろうか。
弟や妹が生まれるという絵本はたくさんあるけど、おかあさんが一人で分娩室に入り、
家族が外で待っている・・のがほとんどで、私はいつも、せっかくのチャンスをもっ
たいないなあと感じていた。
退院してからも、毎日隣りに遊びに行くエリちゃん。ある日あんまり赤ちゃんがかわ
いくて、「ルミさん、見えたらいいね?つい言ってしまった。悪いこと言ったかな
と胸がキュッとなった時、ルミさんは言ったんだ。
「見えるよ。いのちは見えるよ」
それからしばらくして、エリちゃんのクラスに、赤ちゃんを抱いたルミさんがやって
きた。そして、ルミさんの「いのちのはなし」に、子ともたちは真剣に耳を傾ける。
助産婦さんと一緒に幼稚園で「いのちの話」をした時、一番前にいた年中の男の子が
「見た見た! おしりから血が出てなあ・・・」と語り始め、彼のまわりだけ何か違う
光が放っていた(笑)。母親の出産を助産所で一緒に体験したばかりの彼は、そこで見
たもの感じたもの、すべてをあるがまま受け入れていた。
「いのちは大事。私は幸せ。きみはすばらしい」
そんなメッセージは、あきる程発信しつづけたい。子どもは、小さければ小さい程、
自然にそれを心とからだの中に取り込んでいく。
(文;森 ひろえ)