あなただけのちいさないえ
ベアトリス・シェンク・ド・レーニエ/文 アイリーン・ハース/絵 ほしかわなつよ/訳 童話館出版 ¥1,404−
子どもたちと一緒にダンボ−ルハウスに入って遊んでるときや、帰ってきた夫を驚かせようと、息子と布団の間にもぐるとき、その狭くて暗い空間がたまらなく愛しく思える。
それは、自分の子どもの頃を思い出すからでもあるけれど、ある時、ふっと気がついた。
・・・おかあさんのおなかの中。
あの居心地のよい安心感・暗さ・・・。
それをまだどこかで覚えているちいさな人ほど、ちいさな空間を愛するのじゃないかと。
はじめのこの一文。
「ひとはだれでも そのひとだけの ちいさないえを もつひつようがあります」立派な子ども部屋を用意するとか、何か特別なことをしてあげることではなく、もっとちいさなというか、くだらないというか・・・。
一人になりたいと思う時は、誰にでもあるはず。そんな気持ちを受け止めてくれるちいさな場所。心も体もほっとする自分だけの場所。テ−ブルの下・やぶのうしろのくぼみ・紙袋の中・・・どこか秘密っぽい時間を持つことの心地よさ。
そんな時間は子どもだけでなく、新聞を読むお父さんや、うたた寝するお母さんにもあるんだ。
だから、お互いにじゃまをしてはいけない。もし、話しかける必要があれば、ちいさないえのドアをそっとノックして、
「いい子や、もうあなたのいえをでて、
ゆうしょくのおてつだいをするじかんですよ」
・・・・こんなふうに、ていねいに言ってみよう。
(文;森 ひろえ)