ヒッコリーのきのみ
香山美子/作 柿本幸造/絵 ひさかたチャイルド ¥1,080-
秋、家の玄関や遊び場は、息子と一緒に森で拾ってきたどんぐりや小枝、木の葉がいっぱいになる。
どんぐりの中から出てくる虫が嫌と敬遠する人も多いけど、煮沸してから、または冷凍してから遊べば大丈夫。
きれいなどんぐりは家の中でままごと用に。
私たちは、庭の隅に木切れでお家のような囲いをつくり、かまぼこの板に「どんぐりのおうち」と書いた札をつけ、穴があいてたり、つぶれたりしているどんぐりは、遠慮なしに、ぽいぽいそこへ放り込んだ。
だからこのお話にでてくるビーバーの親子がしていることったら、“ぼくとおんなじ”すぎて笑えてしまうの。
かごを持って、森へ木の実を拾いに行くビーバーの親子。おなかいっぱい、ほっぺいっぱい食べた後は、木の実を土の中にかくすんだ。寒い冬の間、お腹がすいた時にいつでも食べられるように。
そういえば、息子もリスのまねをして、庭にどんぐりを埋めていた。死んだ虫も埋めていた。スーパーボールも埋めていた。「どっから芽がでるか、楽しみだあなあ〜」
春になり、ビーバーの子が土の中にかくしすぎて忘れていたヒッコリーの実が芽を出した。
「それがヒッコリーの木とリスの約束。いつか大きなヒッコリーの木になって、おいしい実をいっぱいつけてくれるんだからね。」おかあさんのことばを感心したように聞いているビーバーの子ども。
もちろん、我が家の庭にも芽がジャカジャカふきだした。そして、息子と同じ位の背に育った木の葉っぱのわきに、小さなどんぐりがまた・・・。
スーパーボールから芽はでないってことは、わかってくれたのか?「あれ、スーパーボールもっといっぱいあったはずなのに、どこいっちゃったんだろう。けっこうなくなってるし。」・・・・自分が埋めたことも忘れてるし。
いのちはめぐる。ちいさな子どもに語れる“いのち”は、身の回りにたくさんあるね。
(文;森 ひろえ)