でんしゃ
バイロン・バートン/作 こじままもる/訳 金の星社 ¥820−
シリーズに、「とらっく」「ふね」「ひこうき」があるけれど、0歳から電車に反応していた息子は、いつでもこの本を「ん」と指差した。
暖色で、シンプルな絵。線路の上を走る電車は、次第に小さな物語になっていく。
なかまの電車、線路で働くおじさん、家が並ぶ町から駅へ。
淡々とした展開なんだけど、すごく子どもの気持ちをつかむのうまい!と、読むたびに感心した。
時々ページのどこかに小さな犬がいたりする。
何度読んでも、”またあそこにワンワンいるのかな”と子どもって思うみたい。
見つけると「ん」と自慢気に指さし、「よく見つけたねえ」と言えば満足げに笑う日々が
どれだけ続いたことか。
幼児期になると写実的な本も見るようになり、この本もあまり手に取らなくなった頃、駅のホームを手をつなぎながら歩いていると、ふと息子が言った。
「おりたりのったり えきはにぎやかでしゅ」
あ、「でんしゃ」の文だ。
その瞬間、あのページの男の子とお母さんの絵が、私たちと重なった。
(文;森 ひろえ)