あらしのひ
シャーロット・ゾロトウ/作 マーガレット・ブロイ・グレアム/絵 ほるぷ出版
草原で、小さな男の子がじっと空を見ている。
何かが、空のむこうからやってくる気配を感じているんだ。
お母さんに呼ばれて家に入った男の子は、窓からあらしを眺める。
草木が風にたなびく、家のまわりの様子。
町では傘を斜めにさした人たちが家路を急ぎ、海辺では、漁師のおじいさんが足まで海につかり・・・。
子ども時代のあらしの夜は、星空の夜とは、どこか違う気配があった。
父親の話し声がいつもと違うように聞こえたり、
兄がいつもより優しく思えたり・・・。
ひとつの家の中にいる家族の絆を、いつもより強く感じるんだ。
この出会いは奇跡。
奇跡のようなものといえば、あらしの後、空にかかる虹の橋。
生まれてはじめて大きな虹を見た時のこと。
私は、兄と二人で、言葉もなく、うっとりと東の空を見つめていた。
兄は何か決心したように小屋から自転車を出してきて、私に言ったんだ。
「オレちょっと、あの虹のとこまで行ってくる。遅くなると思うし、もしかしたら、帰って来れないかもしれないからな。誰にも言うな。」
大きな虹に向かって行く兄の後ろ姿を、
私は「そうか、これっきりなのかなあ」と思いながら見送っていた。
(とっぷり日が暮れてからの帰宅で、親に叱られていたのは言うまでもない)
今では父親になり、毎日仕事に忙しい兄だけど、
2人の小さな息子たちと、ゆっくり虹を眺めることがあるんだろうか。
この本は、見開きが絵だけのページの次に、
文字だけのページ・・の繰り返し。
はじめは文字を読まずに、絵を見ながらお話してあげるだけでもいい。
あらしを知ったばかりの、小さい子どもから楽しめる。
(文;森 ひろえ)