あおくんときいろちゃん
レオ=レオニ/作 藤田圭雄/訳 至光社 ¥1,296-
ハロウィンの時、変装ごっこをしようと、布がたくさん入った箱を出してきた。「さあ、何になりたい」
「きいろちゃ−ん」
それから大忙しで布を探し、全身、黄色で包んだ息子を抱き上げると、彼は心配そうに私を見下ろして、こう言った。
「オカアチャン、いっぱい抱っこすると、みどりになっちゃうよ」
なかよしのあおくんときいろちゃんが、会えたのが嬉しくて、とうとうみどりになっちゃって・・・
この絵本を大人になってから読んだ私は、「これは物語の原点だ」と感じた。名作は、小さな落ち着かない子どもにも、静かに聞かせてしまう力を持っている。表紙をパッと見せただけで、赤ちゃんを釘付けにするような力なのだ。
家の近くの通りのむこうにも、息子と仲よしの子どもがいるけど、時にはケンカばかりの一日もある。
そんな時、私はちょっぴり口が へ の字になってる息子に、「今日は、みどりになれなかったね。そんな日もあるさ」と言うのだ。
「ぼくとみどりになりませんか」
そんなメッセ−ジを込めて、この本がプロポ−ズに使われた、なんていうエピソ−ドを聞いたことがあるけれど。子育て中の私にとって、「みどりになるとき」というのは、「嬉しい」と思える時間をすごした時、
一緒にいる人たちの心が、重なりあう瞬間のことなのだ。
(文;森 ひろえ)