あかちゃんのゆりかご
レベッカ・ボンド/作 さくまゆみこ/訳 偕成社 ¥1,512-
友人の家。生まれたばかりの赤ちゃんがすやすや眠っている。
その枕元に、そっと手作りの小人の人形を置いてみた。ふと気付くと、赤ちゃんが寝ているベビーベットの木の感触。絶対に市販のものではない。どこでどうして手に入れたのかと友人に聞いてみると、
「ああ、私の父親が作ったんだ」と言う。
ベビーベッドには、友人の大好きなピーターラビットの絵が焼きつけられていた。赤ちゃんが大きくなると、記念日に少しずつ、おじいちゃんの手作りのものが増えていった。ベビーダンス、ベビーチェア。ある日、小さな木の椅子には、おばあちゃん手作りのテディベアがすまして座っていた。
この本の家族は、赤ちゃんが生まれてくると知り大喜び。お父さんはすぐにゆりかごを作りだす。
板にカンナをかけながら、おとうさんは、海で静かにゆれる船のことを考えていました。ペンキを塗っている間中、おじいちゃんは、同じ地球に暮らす他の動物たちのことを考えていました。もうすぐ地球の仲間が一人ふえるのです。
おばあちゃんは小さい布を縫い合わせてベビー布団を作り、早く赤ちゃんと遊びたいお兄ちゃんは、紙を切り、糸を結んでモビールを作る。月が満ちて、大きなお腹の中で、赤ちゃんが動いている。お母さんは、何か足りないような気がして、ゆりかごをそっと窓のほうへもっていく。そして・・・・。
この絵本の中にある言葉(訳)は、まるで大好きな詩のようだ。「何か考えなくちゃ・選ばなくちゃ・品物か現金か」そんな気持ちで贈られたものは、嬉しくはあっても、心に響いてこないんだよね。赤ちゃんが生まれてくる喜びを、こんなふうに時間と手間を使って表せたら幸せだな。この家族も、生まれてくる赤ちゃんも。
贈り物は、贈り主の心があたたかく伝わるものでありたいね。
(文;森 ひろえ)